ここから本文です
prismhit~~~令和が始まりましたね!
投稿一覧に戻る

prismhit~~~令和が始まりましたね!の掲示板

植田日銀、円安騒動の陰で研ぐタカの爪 利上げ4〜9回?

植田日銀が26日の金融政策決定会合で政策金利を据え置き、国債の購入方針も変えなかった。何らかの円安への対応に期待していた市場は「ゼロ回答」を吹聴し、一段の円売りに走った。だが、円安騒ぎの陰で日銀は連続利上げに向けた布石を着実に打っている。向こう2〜3年をメドに1〜2%の利上げすら示唆してみせた。

円安騒ぎがなかったら、市場はむしろ植田日銀の「タカ派ぶり」に驚いていたかもしれない。仮に円安で追い込まれたふりをしながら金融政策の正常化への舞台を整えているのだとしたら、かなりの高等戦術と言えまいか。

  • >>394

    「基調的」巡るすれ違いで157円台

    「基調的な物価上昇率」という言葉の分かりにくさが、すれ違いと混乱を呼び込んだのかもしれない。26日のニューヨーク外国為替市場で円相場は1ドル=157円台後半まで下落した。

    植田和男総裁は18日のワシントンでの記者会見で、円安について「基調的な物価上昇率に影響を与えるという可能性はありうる」と前置きしたうえで、「無視できない大きさの影響が発生した場合は、場合によっては金融政策の変更もありうる」と語った。「基調的」という言葉に注意を払わなかった市場関係者は、円安に対応した利上げを視野に入れていると解釈した。

    そして今回の決定会合。

    「仮に基調的な物価上昇率に無視し得ない影響が発生するということであれば、金融政策上の考慮、あるいは判断材料になる」

    「基調的な物価上昇率に、ここまでの円安が今のところ大きな影響を与えているということではない」

    植田氏は会見で、ワシントンでの発言の意味するところを詳しく解説した。ところが説明をすればするほど、「円安に金融政策で直接対応するつもりはない」という日銀にとっての「正論」がクローズアップされ、円売り勢を勇気づける結果となった。

    植田氏が会見で何度も言及した「基調的」という言葉は、一時的な要因を除いた、長い目で見た「物価の実力」のこと。表面上の物価上昇率は目標の2%を超える期間が続くが、基調はまだ2%を下回るとみている。

    円安は、まずは輸入物価を押し上げ、国内で価格転嫁が進むにつれ、消費者物価に上昇圧力をかける。日銀が「第1の力」と呼ぶものだ。次に、この物価高の圧力が賃金上昇に波及すれば、国内需要に根ざす「第2の力」が働き始める。やがて賃上げが今度は物価を押し上げ、賃金上昇を伴う緩やかな物価上昇が自己回転する「好循環」につながる。このメカニズムによって動くのが、基調的な物価上昇率だ。

    つまり円安という要素は、最終的に好循環のさらなる進展をもたらし、基調的な2%の物価上昇の定着に向けて寄与していると確信できて初めて、利上げの判断に関わってくる。円安が金融政策を動かすとすれば、そんな回りくどい道のりになる。「円安が進んでいるせいで消費者の生活が大変だから、物価高を止めるために利上げをする」と言っているわけではない。

  • >>394

    利上げシナリオの「本丸」は円安にあらず

    気をつけたいのは、日銀が実際に見据える「本丸」の利上げシナリオは、必ずしも円安とは直接の関係がないことだ。円安の影響に配慮する姿勢をみせつつも、日銀が金融政策の「次の一手」の機を探るうえで決定的に重要だとみているのは、今回の円安よりも前からすでに進み始めている好循環の見極めだ。

    今年の春季労使交渉では大企業を中心に歴史的な賃上げがまとまりつつある。中小企業への波及がしっかりとみえ、人件費増が適正に販売価格へと転嫁される流れが確認できれば、好循環が続く確度が高まる。追加の利上げは十分に正当化される。

    ここに円安の影響が加わると、好循環の起点である第1の力に、もう一回、上向きの力が加わる。うまくいけば賃金上昇に「プラスアルファ」の効果があるかもしれないが、本丸である好循環の見極め作業のなかでは、主役ではない。

    植田日銀は今回の一連の説明で、為替や円安というキーワードをちりばめつつ、ウソのない範囲で円安のけん制を試みたのか。あるいは、円安に背中を押された構図を演出しながら、本丸の利上げに向けた布石を打とうとしたのか。考えられる経路を客観的に語ったまでだと日銀関係者は深読みを制するが、ひょっとしたら両方を狙ったのかもしれない。

    それよりも注目すべきなのは、日銀が円安は関係なく、基調的な物価上昇率が2%に上向いていく可能性に自信を示したことだ。

    今回から2026年度まで予測期間を延ばした「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、基調的な物価上昇率が「見通し期間後半には『物価安定の目標』とおおむね整合的な水準で推移する」と判断を進めた。

  • >>394

    植田氏は会見で、その意味するところを踏み込んで語った。

    「基調的な物価上昇率が見通しに沿って2%に向けて上昇していけば、政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことになると考えている」

    そのうえで、利上げの終着点に関して重要な示唆を示した。

    「とくに見通し期間後半について、この(見通し)通りの姿になっていくということであれば、政策金利は、ほぼ中立金利の近辺にあるという状態にあるんだろうなという展望は持っている」

    中立金利とは、現在の日本経済にとってちょうどよい、「景気をふかしも冷ましもしない政策金利」のことだ。植田氏は「中立金利の水準についてかなりの不確定性がある」としつつ、「なるべく早い期間にもう少し絞るという作業を続けたい」と語った。しかも「少しずつ金利が上がっていく際に、それに対して経済がどういう反応を示すかということに関する情報が非常に重要になる」とも言及し、連続的な利上げのなかで中立金利を探っていこうとする姿勢をみせた。

  • >>394

    中立金利は「1.1〜2.4%」を展望?

    植田氏の頭にある数字を類推しよう。日銀の企画局が昨年12月の多角的レビューのワークショップで示した内外5つの推計によると、実質値でみた中立金利は「マイナス1.0%からプラス0.5%」の範囲内にある。

    日銀内からは、もう少し狭く「マイナス0.4〜プラス0.4%」という相場観も聞かれる。この推計は23年1〜3月期が最新値。現時点で改めて推計すれば、もっと高まっている可能性もあるようだが、保守的にみて「0%」と置いてもおかしくはないだろう。

    名目の中立金利を導くには、ここに予想インフレ率を加える必要がある。予想インフレ率は今回、植田氏がヒントを出している。家計や市場、企業のデータを加重平均した値は「少しずつ上昇を続けてきていて、まあ1%台半ばくらいにあるのかな」という。

    だとすれば、現時点では1.5%前後。予測期間の後半にかけては2%程度で固定(アンカー)されるとみられるので、「1.5〜2.0%」の間ということだろう。

    この結果、名目の中立金利(実質金利+予想インフレ率)は、広くとれば「1.1〜2.4%」ということになる。もちろん日銀の公式見解ではないが、植田氏がこの範囲から「もう少し絞る」意向を持っているという推論は一応成り立つ。

    26年度までの見通し期間の後半に政策金利が中立金利に到達するとみているとすれば、向こう2〜3年に4〜9回ほどの利上げを実施する計算になる。いくら今回の円安がインフレ圧力の強い米国発のものだとはいえ、市場がこのシナリオを完全に織り込めば、日米金利差もさすがに縮小しそうだ。今回もっと強調していれば、円安けん制の材料として、明確な「タカ派パワー」を持ったかもしれない。

    もちろん計画がこの通りに進む保証はないが、円安に追い込まれたように見える構図のなかで植田日銀が着々と練る利上げ計画にも注意を払ったほうがよいだろう。