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投稿コメント一覧 (769コメント)

  • 心筋梗塞などで心臓の筋肉細胞が多数壊れれて血液のポンプ機能が低下した心不全の状態になると、従来はハードルが高い心臓移植でもしないかぎり抜本的な治療方法がありませんでしたが、今週は心臓にこの種の問題を抱える患者さんにとって朗報な再生医療の進展のニュースがありました。
    『ヒトiPSでサルの心機能改善 課題の不整脈抑制に成功 信大・慶大』朝日新聞デジタル 2024/4/26
    https://www.asahi.com/articles/ASS4T45CPS4TUTFL010M.html

    iPS細胞で心筋細胞を培養して心臓に注射することで心臓の機能を回復する研究は以前から行われており、かつて2016年には実際に信州大学の研究チームにイナリサーチが協力してカニクイザルでこの効果を証明。しかしこの時点では心臓の機能が回復した一方で不整脈の副作用が起きておりその解決が課題として残りました。
    『iPS細胞を用いた新しい心臓病治療法を開発』2016/10/5 
    https://www.shinshu-u.ac.jp/topics/uploaddocs/20161005%20release.pdf

    今回の報道は懸案だった副作用の不整脈を抑制する方法を開発し、心臓機能の回復と副作用の抑制を合わせてカニクイザルでの検証に成功したというもので、治療の実現につながる前進と言えます。今回は慶応大学と信州大学の共同研究ですがこれまでの流れで引き続きイナリサーチのラボを使ったのだろうな・・・と思って大学のプレスリリースを見るとはたしてイナリサーチでした。
    『ヒトiPS細胞から作製した心筋球移植による心臓再生に成功 』2024/4/26
    https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2024/4/26/240426-1.pdf

    また今回の実験ではiPS細胞を培養した東京の慶応大から長野のイナリサーチまで4時間かけて輸送した上で移植実験に成功しており、これは将来的にiPS細胞の培養拠点から全国の病院へ輸送して再生医療を行い得ることの実証にもなるわけで、iPS再生医療の実用化がいっそう近づいてきたと感じます。

  • 花粉症やダニアレルギーでお悩みの方に朗報なIRが出ましたね。

    『リケガード®新シリーズのアレル物質低減タイプ「リケガード®A」を開発』
    https://www.rikentechnos.co.jp/information/2024/04/22/20240419%EF%BD%B001/

    抗菌・抗ウイルスで知られるリケガードの仲間に、生活空間のアレルギー物質を低減させる新しいタイプ「リケガードA」が登場です。

    私も最近になって鼻の奥がムズ痒いことが多くなってきましたが、いまや日本国民の二人に一人は空気中に舞う花粉やダニ死骸のアレルギーで悩まされており、しかもその数は年々増えているとのこと(「今や国内では2人に1人がアレルギー性鼻炎。鼻炎症状とうまく付き合うためにできることとは?」順天堂大学 https://goodhealth.juntendo.ac.jp/medical/000263.html

    快適な生活を送るためには生活空間のアレルギー原因物質を極力減らすことが重要なわけで、この機能を持つ新タイプの登場によってリケガードはプライベート空間に活躍の場を広げそうです。

  • >>No. 276

    宇宙開発については、昨年6月に政府が出した「第5次宇宙基本計画」で、2030年代初めまでに国内の宇宙産業を8兆円の規模に拡大させる方針を打ち出して以来、民間の宇宙関連企業に投資して技術開発とその活用を進めようという動きが活発化してきていますね。

    今後急拡大するであろう宇宙ビジネスとの関りでいえば、先月三菱電機が酸化ガリウムのパワー半導体に対して開発投資を進めると発表したのも、人工衛星メーカーでもある同社の戦略と関わりがあるように思われます。気象衛星「ひまわり」やスカパー放送衛星「スーパーバード」シリーズなど人工衛星の製造で実績があり、月着陸機「SLIM」で日本初の月面着陸を成功させた三菱電機ですが、今後の宇宙機市場で圧倒的シェアを持つ海外メーカーを追い上げるには同レベルの技術だけでは難しく、他社を超えた技術的なアドバンテージを得ることが成長戦略として重要となるでしょう。ガリウム半導体を使えば衛星に搭載する通信・放送・レーダーなどのデバイスを高出力化することができ、宇宙放射線の耐性が大きいことから衛星の信頼性と寿命が伸び、しかも全体が省電力となるためより多くの装置をひとつの衛星に積み込めるわけで、これを先んじて取り入れたメーカーには技術的競争力の面で明るい展望が開けると考えられます。

  • 半導体工場といえば目が飛び出る巨額の費用がかかる巨大建築物というのが通り相場でしたが、最近そうした従来の半導体工場と比べてコスト100分の1、サイズ10分の1、製造時間5分の1という画期的なモジュール型の半導体製造施設「キューブファブ(CubeFabs)」を発表したナノトロニクス(Nanotronics)というアメリカのスタートアップ企業が注目されています。

    『NVIDIA製GPUとAIを活用してサイズ&コストを削減する未来のモジュール式チップ製造プラント「CubeFabs」』 Gigazine
    https://gigazine.net/news/20240415-nvidia-gpu-ai-modular-chip-fab-cubefabs/

    そして酸化ガリウム推しのタムラ製作所株主として思わず身を乗り出す点が、この近未来的工場の構想は酸化ガリウムを使った半導体の製造を想定していること。AI(人工知能)の支援を受ければ、酸化ガリウムの強みを最大に引き出せる半導体工場が出来るかもしれませんね。

    『半導体のプレハブ式工場、米新興企業の野望』 ウォールストリートジャーナル
    https://www.msn.com/ja-jp/money/other/半導体のプレハブ式工場-米新興企業の野望/ar-BB1lOzt8

  • 思えば最近ニュースでよく見る麹もコウジカビというカビの一種であり、この微生物の力で味噌や醤油や日本酒が作られているわけで、味わい深い日本の食文化を支えているのはまさにカビであると言えます。

    カビ由来の医薬でいえば一番有名なのは1928年に英国のアレキサンダー・フレミングが青カビから抽出した抗生物質「ペニシリン」で、これまでに膨大な数の人命を救ってきました。そして1973年に遠藤章氏(現・東京農工大学特別栄誉教授)が青カビから発見したコレステロール低下薬「スタチン」も心臓疾患の死亡率を大きく引き下げ数百万人の命を救ったと言われ、発見者の功績はもちろんですが、こうしてみると地球上にいる生物でカビほど人間の命を助けてくれた生物はそう居るまいと思えます。

    そして遠藤教授のカビの研究を引き継いで急性期脳梗塞の治療薬候補TMS-007を開発したのが、同じ東京農工大学のご存じ蓮見惠司教授(現・株式会社ティムス常勤取締役)。実用化されればこれも多くの人命を救う薬となり、ますますカビ様には頭が上がらなくなる未来に期待します。

  • 先週、持っている株の関係で個人的に面白かったニュースのトップ3に入ったのが、小糸製作所が開発したLiDAR(レーザーを使ったレーダー)が大手自動車メーカーに採用されたという報道でした(*1)。小糸製作所は自動車の前照灯(ヘッドライト)でシェア首位のメーカーで(国内60%、グローバル20%)、ここ岡本硝子の主要取引先のひとつでもありますが、この小糸製作所はレーザー走査にモーターを使わない独自方式で小型・低コストとなるLiDARを出資先の米国ベンチャー企業セプトン社と共同開発という報道が以前からあり、小糸製作所の主力事業であるヘッドライトと一体化した商品展開を目指しているようです(*2)。つまりここ岡本硝子が需要を想定していた(*3)ヘッドランプ一体型のLiDARが実現しつつあり、そのヘッドランプの世界的メーカーはかねてより岡本硝子の製品を使っているお得意様でもある、という良い流れが見えてきたようです。

    近年、水銀ランプに代わって固体レーザー光源の割合が増えているプロジェクターの市場で岡本硝子が大きくシェアを伸ばしている(先日の発表でプロジェクター用反射鏡で世界シェア92.6%、内部レンズで世界シェア65.1%)ことは同時に岡本硝子がレーザー光を扱うガラス部品に強みを持っているということを意味しており、自動運転車両の普及と連動して今後拡大が予想されるLiDARの市場で岡本硝子が今後どのような活躍を見せてゆくか、中長期の投資を目指す者として楽しみにしています。

    (*1)「小糸製作所が車載短距離LiDAR初受注、自動運転レベル4搭載車に採用」日経クロステック 2024.04.11
    https://active.nikkeibp.co.jp/atcl/act/19/00008/041105728/

    (*2)「小糸がLiDAR組み込みヘッドライト、新世代センサー相次ぐCES 2024」日経クロステック 2024.02.27
    https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00050/00160/

    (*3)車載分野 -進化続けるヘッドランプ 「2023年度上期決算説明会資料」p.17より (下図)

  • 新技術への期待が主な投資テーマなので、保有株に関係する情報を求めて知財ポータルサイトを時々見ているのですが、ここタムラ製作所の関係では4月10日に「垂直ブリッジマン法による6インチ酸化ガリウム基板」に関するノベルクリスタルテクノロジーの特許出願「単結晶の育成方法、半導体基板の製造方法、及び半導体基板」が公開されているのが目にとまりました(公開番号P2024050122、出願日2022/9/29、公開日2024/4/10)。
    https://ipforce.jp/patent-jp-P_A1-2024-50122

    この出願に「産業技術力強化法第17条の適用」とあるのは、国が公募し資金を出した研究成果の知的財産権をその研究を受託した民間企業に100パーセントあげるからしっかり活用して産業振興に役立ててよねという制度のことで、米国の同趣旨の制度に倣って「日本版バイ・ドール制度」と呼ばれている仕組み(経済産業省ホームページ https://www.meti.go.jp/policy/economy/gijutsu_kakushin/innovation_policy/bayh_dole_act.html)。酸化ガリウム半導体が活躍する世界の実現に向けてノベルクリスタルテクノロジーは大きな期待を担っていると言えます。

  • 『プロジェクター用反射鏡で世界シェア 92.6%を獲得 ~当社株式上場以降のシェア最高値を記録~』
    https://ogc-jp.com/new/wp-content/uploads/2024/04/8e22746598255625eaff1251c5fcbcf8.pdf

    プロジェクターといえばその技術は近年急速に進化しており、平たい壁に映像を投影するだけの装置だったのはもはや昔話。投影した映像に自由に文字が書けるインタラクティブ・プロジェクター(電子黒板)が次々発売され、屋外の凸凹がある建築物に巨大な映像を投影するプロジェクション・マッピングの画像補正技術は見るごとに驚異的なものになっていき、医療分野でも開腹した臓器に手術の手順を次々に投影する手術ガイドプロジェクタが実用化されてといった具合に、ビジネスだけでなく教育・医療・エンタメへの市場拡大がいっそう進んでいく情勢です。市場成長率でいうとインタラクティブ・プロジェクターやプロジェクション・マッピングについては2030年に向けての年間平均成長率(CAGR)が20%台と目されており(*1)(*2)、岡本硝子が今後大きな成長が見込まれるプロジェクター業界でハードウェアの中核部品である「反射鏡とレンズ」の大きなシェアを獲得している事に注目しています。

    (*1)https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/interactive-projector-market
    (*2)https://www.mordorintelligence.com/ja/industry-reports/projection-mapping-market

  • 先日発表された日本ゼオンの新素材が美術品の偽造防止に応用された件は日経新聞ににも載りましたね。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC023G80S4A400C2000000/

    偽造防止ということなら紙幣の透かしなんかにも使えそうで、特に透明なシートの裏と表で別の図柄が見えるというのはプラスチック紙幣に使うと未来的で見栄えもする偽造防止の透かしが出来そう。プラスチック(ポリマー)紙幣はイギリスやオーストラリアやシンガポールなど世界で25か国以上で使われているようで、用途開拓の一環として「広帯域化コレステリック液晶」の透かしが入ったプラスチック紙幣の見本を作ってアピールしてみるのはどうでしょう(⌒-⌒)。

  • 多くの食品メーカーを巻き込み連日トップニュースとなっている紅麹問題で、ついに原因物質の可能性として今日名前が出てきたのが青カビが作る有毒化合物「プベルル酸」とのこと。健康を増進するために毎日飲んでいるサプリメントが腎臓病を引き起こしてしまったのがまず皮肉ですが、実験用シャーレに紛れ込んだ青カビが抗生物質ペニシリンを生み出し膨大な人命を救う救世主となった一方でその親戚には食品工場に入り込んで強力な毒を流す殺人者がいるというのも皮肉な話。よく言われるように薬と毒とは紙一重なわけで、微生物は食品・薬品の生産に非常に役立つ一方で、その極微の生産ラインに毒を隠したテロリストが侵入しないよう常にセキュリティチェックが必要なようです。

    じっさいに青カビ由来のプベルル酸が今回の事件の原因だった場合、原料や製造ラインで意図しない菌類が増殖していないか定期的にチェックすることが食品・薬品業界全体の問題として再発防止の対策となるでしょうが、原料や生産ラインに紛れ込んだ菌を迅速・高感度かつリーズナブルに検出すると言う話であればもちろんここ栄研化学のLAMP法が適しています。過去記事で見るとサッポロビールが生産工程で有害な赤カビを検出する体制を栄研化学と共同で開発していましたが(https://www.chem-t.com/cgi-bin/passFile/NCODE/13250)、このようにビールの醸造工程にLAMP法の赤カビの検出を組み込めるなら、それをモデルケースとして麹の発酵工程に青カビの検出を組み込むことも可能なはずで、小林製薬の経営陣が再発防止策を講ずるにあたっては、まずサッポロビールまたは栄研化学から技術者を招いてこのノウハウを取り入れることをお勧めしたいと思います。

  • 業務分野が新日本科学と一部重なり、この掲示板でも名前が出ることがあったCRO大手のシミックHD[証券コード2309]が、本日3月28日をもって東証プライム市場上場廃止となりました。国際共同治験が主流となってゆく中、外資系大手PPDとの合弁である新日本科学PPDが順調に売上を伸ばす一方でシミックは近ごろ急速に業績が落ち込み、海外で開発された薬の国内承認には日本人を使った治験が必要という国内ルールが昨年廃止されたこともこれに追い打ちをかけたように思われます。

    昨年11月にシミックがMOB・上場廃止の方針を出した際の説明では「動物試験の旺盛な引き合い」に経営の活路を見出そうとしていたようで、その直前にはカニクイザルの非臨床試験を手掛ける「浜松ファーマリサーチ」を買収したり、代表取締役CEO中村和男氏が自ら「創薬支援・非臨床(臨床薬理)事業担当 」となる組織変更が行われたりしていましたが、情勢の変化の速さに対して対応が少々遅れた観は否めません。とはいえマンションの一部屋から身を起こして従業員8000人の企業グループを育て上げ、日本CRO協会を立ち上げてその会長を務めた中村氏が非凡な経営者であることは確かで、早ければ数年で経営を立て直して再上場する可能性があると個人的には考えています。方向性としては海外CRO大手との提携をより大胆に行い、かつカニクイザルなどを使う非臨床分野にも重点を置いた、いわば新日本科学に近い経営モデルを取ることが考えられ、シミックは上場企業であったこれまでよりも非上場企業となったこれからの方が気になる会社になってきた感じです。

  • パワー半導体の生産で国内首位であり、その製品にも膨大な数のパワー半導体を使っている三菱電機。その三菱電機がついに酸化ガリウム半導体への投資に本腰を入れる様子です。

    日経クロステックの記事 2024.03.27 より引用
    『三菱電機が酸化ガリウムパワー半導体に開発投資、SiCより高耐圧領域狙う』
    「三菱電機は次世代パワー半導体として期待される酸化ガリウム(Ga2O3)の研究開発に投資する。電動車(xEV)向けなどで力を入れる炭化ケイ素(SiC)パワー半導体と比べて「より高耐圧の領域を対象に最適なターゲット市場を選定していく」(同社)。SiCやGa2O3を含めた次世代パワー半導体、材料・製品の循環利用、再生可能エネルギー関連などグリーン分野の研究開発投資として、2024~30年度に合計で約9000億円を投じる。」
    https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/24/00467/

    タムラ製作所の株を持つ者としては勿論ノベルクリスタルテクノロジーへの言及に目が行きますが、もうひとつこの記事で注目したい点が炭化ケイ素(SiC)より高耐圧の領域に投資という趣旨ながら窒化ガリウム(GaN)への投資には言及しておらず、酸化ガリウム(Ga2O3)への投資にフォーカスしているところ。三菱電機のこの動きは次世代パワー半導体の普及の流れに大きく作用するのではないかと思われ、続報に注目したいと思います。

  • 目先の株価とはスパンが異なる話ですが、今日の日経新聞に出ていたNVIDIAのジェンスン・ファンCEOの会見記事で、「日本は自ら人工知能(AI)を構築すべきだ」と同氏が述べているのは興味深いものがありました。

    『NVIDIAファンCEO「日本は自らAI構築を」開発者会議で』日経新聞 2024/3/20
    「ファン氏が19日、米カリフォルニア州サンノゼで開いた記者会見で日本に関する質問に答えた。日本語の学習データは特殊だと指摘し、「日本語データでAIを開発し、日本に再び輸入するのを(外国企業などの)第三者に任せる理由はない」と話した。ファン氏は「AIは国家の生産性を高めるベストな方法だ」と指摘した。」
    https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN19E960Z10C24A3000000/

    確かに日本が国家戦略レベルで日本語を軸とした対話型生成AIを育てていく上でGoogleやAmazonにまるごと依存するなんてのは下策に違いありませんが、昨今話題のNVIDIAのトップが同趣旨の発言をするのを聞くとまた違った響きがあります。近頃は国産生成AIの開発に関するニュースも続いており今後の成長が期待されますが、その社会実装も国内企業を重点的に採用できれば、長期の経済安全保障を考える上でより良い選択と言えるでしょう。

  • 本来は糖尿病の薬でしたがこのところ肥満症治療薬として世間的な知名度が上がってきた「GLP-1受容体作動薬」、その売り上げの伸びで工場をフル稼働している米イーライリリーや欧ノボノルディスクの業績向上が昨今すごいことになっているようです。肥満治療薬は世界的に非常に大きい需要があり、ゴールドマン・サックス・リサーチ社は2030年までに1000億ドル(約15兆円)で現在の十数倍の市場に成長すると見積もっていますが、「GLP-1受容体作動薬」の減量効果については脂肪だけでなく減らなくていい筋肉まで減ってしまうという気になる臨床データがあり、この薬を試したい人は今後の研究の動向に注意する必要がありそうです。筋肉が減ると代謝が落ちて太りやすい体質になる→リバウンドの体重増加を防ぐために高価なやせ薬を止められなくなるというのは、とくに加齢で筋肉量がもともと減少傾向にある中高年にとって避けたい事態でしょう。

    2012年に新日本科学が設立して現在も出資を続けているWave Life Sciences社は、大手製薬会社グラクソ・スミスクラインと提携して、肥満に関係する遺伝子INHBEの働きを抑える医薬の開発に着手したと昨年9月に発表。これは筋肉量を保ちながら内臓脂肪を減らせる「siRNA」というタイプの核酸医薬で、現在出回っているGLP-1受容体作動薬の懸念点を克服した新しい肥満治療薬となる可能性があります。3日前の岩田さんブログにも書かれていますが投与回数は年に1~2回だけで済む見込みで、たとえば先日日本国内での処方が始まったGLP-1受容体作動薬「ウゴービ」が毎週注射を打つのに比べて負担が軽いのも魅力的です。大きな市場にアクセスする新薬候補として、新日本科学の子会社Satsuma Pharmaceuticalsの経鼻偏頭痛薬の動向とともに、重要出資先Wave Life SciencesのsiRNA肥満治療薬の開発も今後の進展に注目したいと思います。

    Wave Life Sciencesの2024/3/6付資料 p.20より
    GLP-1アゴニストと比較したINHBEサイレンシング(siRNA使用)のメリット

  • No.174 強く買いたい

    3/12日のIR、国産ワクチン…

    2024/03/14 00:56

    3/12日のIR、国産ワクチン開発の司令塔「先進的研究開発戦略センター(SCARDA)」の公募に新日本科学の「粉体噴射型IgA産生誘導経鼻ワクチンシステムの開発」が選ばれたことで、経鼻ワクチンの開発がいっそう促進されることに期待します。

    新日本科学のこれまでの経鼻ワクチンの取り組みを時系列で振り返れば、2022/8にシオノギファーマと「経鼻投与製剤等の製造開発推進に向けた業務提携」、2023/1に近畿大学と「新規経鼻ワクチンの共同研究契約」締結、そして今回2024/3にAMED/SCARDAの開発事業「感染症ワクチンへの応用が期待される新規モダリティの研究開発」に採択というわけで、産官学が揃って同じ目標に向かう体制が整ってきました。

    呼吸器の粘膜上にIgA抗体を作る経鼻ワクチンが出来れば、コロナやインフルエンザを人体の戸口で撃退できるようになり、人体の奥の間にウイルスの侵入を許してからどうにかしようとしてきたこれまでの注射式ワクチンに比べて大きな進歩となります。この完成が次のパンデミックに間に合うよう、新日本科学とその経鼻ワクチンセンターを応援しています。

  • 以前何かの対談記事で見たのですが、酸化ガリウムがなぜ極限環境でも化学的に安定かという話で、そりゃもともと酸化していますからな~という説明があって面白かった記憶があります。その中でも結晶構造としてβ型が安定相でα型が準安定相なので、宇宙のような激しい環境下(放射線・高温・低温)での安定動作・長期動作を重視するニーズでは、最終的にβ型の酸化ガリウムが多用されることになると考えています。

    「選択と集中」の観点からして、政府の資金投入が未だに最適解でない場面が多いのは確かだと思います。現時点で遅れを取っているところに資金を投入しても効果が薄いのに対して、いま育ちつつある有望な技術シーズに集中投資すれば将来大きな市場のニーズを獲得できるわけで、今の投資の選択によって未来がどのように変化するか、問題はそのビジョンをどれだけ共有できるかにかかっているのでしょうね。

  • サウジアラビアのキング・アブドラ科学技術大学(KAUST)は、産油国がポスト石油時代に生き残る次世代技術の開発を目指し、国王肝入りで2兆円を投じて世界中から先端分野の研究者を招聘した科学研究機関。そのKAUSTがさいきん酸化ガリウムのICの可能性について論文を発表していました。

    『Ga₂O₃ のICは極限環境に対して特別な期待を提供する(Ga₂O₃ ICs offer exceptional promise for extreme environments)』
    https://compoundsemiconductor.net/article/118838/Ga%E2%82%82O%E2%82%83_ICs_offer_exceptional_promise_for_extreme_environments

    この論文は「Ga₂O₃は優れたオールラウンダーであり、低温、高温、高レベルの放射線などのあらゆる極端な環境条件において優れた特性を提供」として、この面でシリコンカーバイド・窒化ガリウムに対する酸化ガリウムの優位性を示し、酸化ガリウムのIC化を目指して論理回路と不揮発メモリの試作を行っていると説明しています。

    宇宙産業は2040年に1兆ドル市場とよく言われますが、宇宙の極限環境で人類の活動を支える電子回路には放射線と高熱と低温に耐えるタフさが求められており、酸化ガリウムICが広く活躍する舞台になることでしょう。その大きな市場を目指して技術開発の先行投資を行う十分な理由が酸化ガリウムにはあるわけです。

  • 上場といえば、今月28日には日本のCRO業界の草分けであるシミックHDが株式上場を廃止するというイベントがあります。同じ臨床試験受託でもグローバル治験に強い新日本科学PPDが高い成長を続けているのとは対照的にシミックの業績はこのところ落ち込んでおり、いちど株式上場をやめて事業の再編を図る姿勢です。このシミックHDの中村和男CEOが昨年11月に上場廃止を含む事業再編を説明した文章を読むと、動物試験の旺盛な引き合いがありその分野に長期目線での戦略的投資を行うという、注目すべき部分がありました(*)。

    カニクイザルの価格が低い時期からそのサプライチェーンを整えてきた新日本科学とは異なり、シミックがカニクイザルの価格が高騰した現状をスタートとしてこの分野に舵を切るのは数年以上の時間と大規模な資金投入が必要となり、利益があがらない期間が長く続くことが上場廃止を決断した一因と思われますが、逆に言えば長期の雌伏を耐えてもカニクイザルなどを用いる前臨床事業を育てたい、この分野にはその代償に値する大きな成長性があると見込んでいることになります。

    (*)シミックHD「MBOの実施及び応募の推奨に関するお知らせ」p.7
    https://www.cmicgroup.com/files/user/NewsRelease/Japanese/20231107_J_3.pdf

  • 昨日の投稿、私としたことが日付を書き間違えており申し訳ありません(,,ᴗ ᴗ,,)ペコリ。
    以下訂正しました。
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    岩田さんブログで知りましたが、今日3月8日は上場20周年とのことでおめでとうございます。
    https://snblir.blogspot.com/2024/03/20.html

    3月8日はちょうど国際女性デーでもあり、女性活躍を応援する新日本科学が地元鹿児島のテレビに登場した模様。主力事業の伸びと期待材料の実現、そしてSDGs/ESGで時代をリードする新日本科学の活躍にますます期待します。

    『3月8日は国際女性デー「多くの人に知ってほしい」ミモザのミニブーケをプレゼント 鹿児島市』 鹿児島ニュースKTS
    https://www.youtube.com/watch?v=-0J_cmqZgs4

  • 本日のIR、「秩父宮妃記念結核予防功労賞(国際協力功労賞)」の受賞おめでとうございます。
    https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/20240308550493/

    この表彰式は来週3月15日に行われる結核予防全国大会で行われる模様。栄研化学の技術(LAMP法)と国際貢献があらためて見直されるよい機会であろうと思います。

    ※動画は塗抹検査からTB-LAMPへの置換えが進行中のカメルーンのケース
    https://www.youtube.com/watch?v=YNXmEJSc27M

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