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>>1063

(続き)

<円安長期化なら物価上昇圧力は増大へ>
ドル/円は4月26日の決定会合後に156円台へ上昇し、4月29日には160円台に乗せた。政府・日銀のドル売り・円買い介入観測でいったん150円台前半まで下げたが、9日時点で155円台に戻しており、日米の金利差を背景に150円台での推移がしばらく続きそうとの見方が多数を占めつつある。
一時後退した米利下げ期待は、弱かった4月米雇用統計を機に9月説が息を吹き返してきたものの、インフレ指標の粘着的な状況に変化が見えない場合、利下げ時期が11月ないし12月まで先送りされるとの見方も相応に残っている。
ドル/円が昨年9月上旬に140円台後半での推移だったことを考えれば、150円台の円安が長期化することによる物価上昇の圧力は相応にあると判断するのが合理的だろう。今年度の春闘は最終的に5%台の賃上げが実現する可能性が濃厚で、人件費上昇に伴うサービス価格の上昇も夏場から年後半にかけて予想されており、そこに円安を受けたモノの値上げが加わると、市場の想定を超えた物価高になることも予想される。
中央銀行の政策判断は、実際に物価が上がり出したことを確認してからではなく、上昇加速のがい然性が高くなりそうだと判断した場合に先手を打って行われることが多い。その意味で150円台の円安が基調的な物価上昇率にどのような影響を与えるのか、日銀の情勢判断次第で、利上げの時期が前倒しされる可能性があると筆者はみている。
9日発表の「主な意見」が4月末の会合で実際に出た段階では、ドル/円はまだ160円台に距離があった。
ところが、会合では「円安を背景に基調的な物価上昇率の上振れが続く場合には、正常化のペースが速まる可能性は十分にある」との意見が出ていた。また、「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)の見通しが実現するのであれば「金利のパスは、市場で織り込まれているよりも高いものになる可能性がある」との見解や、「物価安定の目標」の達成時における不連続かつ急激な政策変更によるショックを抑えるために「経済・物価・金融情勢に応じて、緩やかな利上げを行うことで金融緩和度合いを調整することも選択肢として考えられる」などの意見も表明されていた。
<対話重視の植田総裁>
こうした最近の植田総裁の発言や、日銀政策委員会の主な意見は、これからの政策変更を予見していく上で極めて重要な情報発信であると考えるべきだろう。
というのも、植田総裁は前総裁の黒田東彦氏のサプライズ路線とは対照的に、マイナス金利解除までのプロセスでも市場に徐々にヒントを与える対話路線を採用してきた経緯があるからだ。
今回の講演と会見の内容を見ても、4月会合後の会見と比べて円安が与える基調的な物価上昇率への影響を繰り返し説明し、利上げ検討の可能性があることをにじませようとしていると筆者には映った。
市場では、次の利上げ時期に関して9月か10月と予想する声が多数派を形成しているようだが、7月会合での利上げの可能性が相応にあると予想する。為替市場の動向などによっては6月会合での決断も排除されないのではないかと考える。
また、日銀の政策手段から外れた国債買い入れについて、植田総裁は緩和からの出口を模索していく中で「減額していくことが適当だ」と述べており、国債買入減額も遠くない時期に正式に打ち出してくるだろうと想定している。
日銀は「次の利上げプロセス」に入ったのだろうとみている。

(終)