ここから本文です
石橋ゲルルの楽しいFX
投稿一覧に戻る

石橋ゲルルの楽しいFXの掲示板

>>56

デフレが長く続き、預金に置いていても価値は目減りしなかった。日本の不良債権問題やリーマン・ショックのような金融危機が発生しても、銀行も預金者も公的資金で守られてきた。ゼロ金利時代の預金は収益化が難しかった。その結果、銀行への預金集中が進んだ面は否めない。

インフレ時代が到来し、日銀が金融政策を正常化しても預金離れが起きるかは見通せない。金利のある世界に戻れば、預金量が収益に比例するため、大手銀行は預金調達強化へ走り始めたからだ。23年に入って、3メガバンクは預金集めを強化していることを金融庁に伝えていた。金融庁が異例の要請文を出したのは、預金回帰へのメガバンクの動きと無縁ではない。

ただ、注目すべき動きを始めた大手銀行がある。三井住友信託銀行だ。24年春にも発売する予定の「元本補塡付き信託商品」は地殻変動を促す可能性を秘める。

大山一也社長は「厳密に言えば法令上異なる存在だが、令和版の貸付信託を復活させる意味合いがある」と解説する。貸付信託とは高度成長期に人気を博した信託商品で、預金の競合商品だった。

最大のポイントは集めた資金を特定の産業に供給する産業金融を意識している点だ。今回はサステナブルファイナンスに資金を振り向けることを想定し、経済成長を促すリスクマネーとして活用しようという思惑がある。

商品名が示すように、万が一、金融機関が破綻しても元本が保証される点で預金と同じだ。貸付信託の復活は「貯蓄から投資へ」の政策が金融構造改革と結びつく意味で興味深い。

  • >>57

    01年に出した「証券市場の構造改革プログラム」の狙いは間接金融から直接金融への転換を促し、当時、問題になっていた不良債権問題の再発防止だった。間接金融中心の金融構造が多額の不良債権を生み出した遠因と考え、解決策として直接金融拡大を狙った。

    現実は逆コースを歩んでしまう。強固な信用力を誇るメガバンクが誕生し、貯蓄大国の土台を強固にしてしまう。金融庁が銀行に証券業務を段階的に解禁し、窓口で投資商品を販売できるよう手当てしたものの、仕組み債など高リスク商品の販売に走る銀行もあり、逆に投資へのアレルギーを醸成してしまった面は否定できない。

    今年4月、岸田文雄首相が金融庁に資産運用立国プランの策定を求めた指示書に幻の一節がある。「メガバンクの改革」。銀行ビジネスにメスを入れなければ、真の「貯蓄から投資へ」は実現しない。木原誠二元官房副長官が集めた私的勉強会「金融問題研究会」も5月に「本邦金融機関経営に関する5つの提言」をまとめており、お蔵入りになったメガバンク改革が再び脚光を浴びないとも限らない。
    (金融エディター 玉木淳)