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メガバンクに預金回帰の動き、金融庁が異例のけん制
2023年12月27日
日本経済新聞

「資産運用ビジネス強化策について検討頂きたい」。今から2カ月前の2023年10月、金融庁が大手銀行に出した1通の要請文は、監督当局が出す行政文書としてはかなり趣が違っていた。

通常は金融庁への報告で済むが、今回は「可能な限り来年(24年)1月末までにグループとして対外発信」するよう求めた。しかも「グループにおける経営戦略上の位置づけ」「人材育成を含む運用力向上の方針」「ガバナンス改善・体制強化」の3点を条件に付けた。

ビジネスモデルや人事に口を挟む細かい内容に、受け取ったメガバンク関係者は「こんな要請文は初めて」と戸惑った。

政府は23年12月に「資産運用立国実現プラン」をまとめた。24年1月からは非課税措置を拡大した新しい少額投資非課税制度(NISA)が始まる。「貯蓄から投資へ」を実現するには貯蓄大国の看板返上は欠かせない。金融庁が異例の行政文書を出したのは大手銀行の意識を改革する必要があったためだ。

政府が初めて「貯蓄から投資へ」を政策に掲げたのは2001年。三井住友信託銀行の調べによると、当時7.7%(評価損益除き)だった個人の投資率は23年9月末には13.7%までほぼ倍増した。

貯蓄率は同じ期間、53.9%から52.5%へ1.4ポイント程度しか低下せず、ほぼ横ばいだ。金融庁のある幹部は「50%を超えるのは異常。30〜40%になるのが日本の姿ではないか」とした上で「銀行が動かなければ実現できない水準だ」と語る。

  • >>56

    デフレが長く続き、預金に置いていても価値は目減りしなかった。日本の不良債権問題やリーマン・ショックのような金融危機が発生しても、銀行も預金者も公的資金で守られてきた。ゼロ金利時代の預金は収益化が難しかった。その結果、銀行への預金集中が進んだ面は否めない。

    インフレ時代が到来し、日銀が金融政策を正常化しても預金離れが起きるかは見通せない。金利のある世界に戻れば、預金量が収益に比例するため、大手銀行は預金調達強化へ走り始めたからだ。23年に入って、3メガバンクは預金集めを強化していることを金融庁に伝えていた。金融庁が異例の要請文を出したのは、預金回帰へのメガバンクの動きと無縁ではない。

    ただ、注目すべき動きを始めた大手銀行がある。三井住友信託銀行だ。24年春にも発売する予定の「元本補塡付き信託商品」は地殻変動を促す可能性を秘める。

    大山一也社長は「厳密に言えば法令上異なる存在だが、令和版の貸付信託を復活させる意味合いがある」と解説する。貸付信託とは高度成長期に人気を博した信託商品で、預金の競合商品だった。

    最大のポイントは集めた資金を特定の産業に供給する産業金融を意識している点だ。今回はサステナブルファイナンスに資金を振り向けることを想定し、経済成長を促すリスクマネーとして活用しようという思惑がある。

    商品名が示すように、万が一、金融機関が破綻しても元本が保証される点で預金と同じだ。貸付信託の復活は「貯蓄から投資へ」の政策が金融構造改革と結びつく意味で興味深い。