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(株)リボミック【4591】の掲示板 2022/01/06〜2022/01/07

 米国で加齢黄斑変性を対象に開発を進めている抗FGF2核酸アプタマーのRBM-007について、第2相臨床試験であるTOFU試験のトップラインデ―タが12月28日引け後発表された。RBM-007単独療法、RBM-007+アイリーアの併用療法ともに、アイリーア単独療法に比べて主要評価項目である視力の改善効果が見られなかったというものだ。


 本件がバイオセクターに与えたネガティブな影響は大きい。RBM-007のTOFU試験に対する成功への期待は大きく、それは会社からのポジティブな発表が続いていたからだ。2021年9月に米国網膜学会で、ブラインドデータながら7割の患者で視力の安定または改善が見られたことを公表し、11月の上期決算説明会では、2022年3月の予定だった結果発表を前倒しして、世界的イベントであるJ.P. Morgan Annual Healthcare Conferenceに設定したこと、メガファーマを含めた国内外の製薬企業から問い合わせや提携の打診を受けていたことなどを説明した。

 会社の発表内容から試験成功の可能性を信じた投資家も多かったことだろう。それが主要評価項目未達となり、また実データが公開されていないことから、同社に対してはIR方針に対する不満の声も寄せられているようだ。もっとも、バイオスタートアップの経営者としては、許される範囲内で自社への期待を高める努力も求められる。リボミックも虚偽のIRを発出したわけではなく、その内容が適切か否かの線引きは難しいだろう。

 関連して、7割の患者で視力の安定または改善が見られたにもかかわらず、試験でアイリーアと比較して優越性を示せなかったことに対する疑問の声も上がりそうだ。この点、リボミックはこれまでTOFU試験について「標準治療の抗VEGF薬が奏功しない加齢黄斑変性患者が対象」と説明しているが、これは主要評価項目である「視力低下」が収まらない患者ではなく、「網膜における滲出」が収まらない患者である点に注意を要する。1つの捉え方として、視力低下と網膜の滲出は必ずしもイコールではなく、このためアイリーア群には視力が安定している患者も一定数存在する可能性がある。そうなれば「視力が安定または改善が7割」というデータも納得がいく。だが、こうした点に関する説明が不足していた感は否めない。

 一方、TOFU試験の結果は、現段階では必ずしも失敗とは言い切れない。当初からこの試験の目標は3段構えであり、ベストシナリオはアイリーアに対して優越性を示すこと(第一選択薬としての有用性)だったが、これはもともと非常にチャレンジングな目標だった。次点としてアイリーア+RBM-007の併用がアイリーアに対して優越性を示すこと(アイリーア併用薬としての有用性)、次々点としてアイリーアとの非劣性を示すこと(アイリーア以降の第二選択薬としての有用性)も想定していた。

 中村社長は2019年11月の第2四半期決算説明会で、TOFU試験について「単剤がアイリーアに対して非劣性であっても、アイリーアが効かない患者さんに別の作用機序を持つ薬剤が提供されるということは、その患者さんにとって大きな福音となり得ると米国臨床医から意見をもらっています。当然ながら、単剤比較で非劣性でも、アイリーアとの併用で優越性が示されることを期待しています」と語っている。

 この点に関して、TOFU試験の副次評価項目を含めたデータが発表されていない現時点ではいずれも推測の域を出ないが、ベストシナリオも次点のシナリオも、今回のTOFU試験結果からは難しいのかもしれない。ただ次々点のシナリオの、RBM-007がアイリーア無効時の第二選択薬としてのポジションに落ち着く可能性は残っているとの解釈はできそうだ。

 また、これも複雑だが、12月28日の発表では未治療の加齢黄斑変性の患者を対象としたTEMPURA試験(医師主導治験)の状況も同時に報告され、そこでは視力と網膜組織構造の改善が認められたとしている。この試験結果次第では、RBM-007をアイリーアよりも前段階に使う1次治療薬として開発していく道も見えてくる。そこまでの逆転劇が起きるかは分からないが、網膜の瘢痕形成抑止効果も含め、まだRBM-007への結論は出ていないと言えそうだ。

 1月10日のJ.P. Morgan Annual Healthcare Conferenceで、リボミックがどのような発表をするかがポイントだ。同社は「基本的に、12月28日に発表した内容以上の新たなデータは出ない予定だ」としているが、TOFU試験の結果をどう解釈すべきかという点について中村社長が言及すると思われ、注目が集まる。