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eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)【0331418A】の掲示板 2023/06/25〜2023/10/23

6月13-14日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)は市場予想通り、政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)レートの誘導目標を5.00-5.25%で据え置くことを決定しました。これまで10会合連続で利上げを実施してきましたが、声明文は「今会合で政策金利を据え置きとすることで委員会は追加的な情報や金融政策への示唆を評価することができる」と表明し、据え置きがあくまで一時的なものであることの含みを持たせる表現を用いています。

予想外であったのは、参加メンバーの政策金利見通しであるドッツにおいて、2023年末(中央値)5.625%、2024年末(同)4.625%、2025年末(同)3.375%と、前回3月の同5.125%、4.250%、3.125%から上方修正され、23年内に0.50%ポイントの追加利上げが見込まれている点です。  

その後、6月21日に行われた下院金融サービス委員会の証言においてパウエルFRB(米連邦準備理事会)議長は「ほぼ全てのFOMC参加者は、年末までにさらに幾らかの利上げを行うことが適切と考えている。今年あと2回の利上げという見通しは非常に良い推測」と述べ、改めて追加利上げの可能性を示唆しました。FFレート先物市場とFRBのインフレに対する認知ギャップは、市場期待の上方シフトという形で直近の1ヶ月あまりでかなり縮小していますが、未だ相当程度のギャップが観察されます。

ところで、やや堅苦しい話になりますが、日銀がかつて予想物価上昇率の形成メカニズムに関して日本、米国、ユーロ圏、英国を比較分析しています(注)。インフレ予想は中央銀行の物価目標による「フォワード・ルッキングな期待形成」と現実の物価上昇率の影響を受ける「適合的な期待形成」の2つの要素によって形成されますが、米国の場合、「フォワード・ルッキングな期待形成」がインフレ予想により大きな影響を及ぼすことが指摘されています。一方、日本の場合は「適合的な期待形成」の方が影響度が大きいとの分析結果になっています。

つまり、FRBがインフレターゲットである「2%」を強く意識する→実際のインフレ率とのギャップが大きいため、容易には利下げに転じない→インフレ予想の低下には時間を要する、との想定が成り立ちえます。

従って、インフレ率がピークアウト、減速しているとは言え、ターゲットである2%からまだかなりの距離がある場合、容易には利下げしない、と市場が今後更に織り込んでゆく展開が予想されます。米国10年国債利回りが3%台後半で推移しているのは、こうした市場心理が底流にあるのかもしれません。  

一方、FRBは保有証券の残高を縮小するという「正常化」を粛々と進めています。「ゼロ金利政策」からの決別の路線も踏まえれば、米国の金利水準は、金融・経済ショックがない限り、かつてのような低水準には低下しないでしょう。とすれば、ここから得られる投資のインプリケーションは、仮に日銀が政策修正したとしても「日米金利差は相当程度維持され、大幅な円高進行は考えにくい」となります。

(注)日本銀行「量的・質的金融緩和導入以降の経済・物価動向と政策効果についての総括的な検証」(2016年9月)