ここから本文です
究極の株式投資(究株)
投稿一覧に戻る

究極の株式投資(究株)の掲示板

皆が売ってる時に安く仕込むのは、長期投資の基本ですよね♪

REIT、「三重苦」脱し急反発 ホテル投資に追い風も
日経ヴェリタス
2024年4月1日

低迷していたREIT相場は急反発した

不動産投資信託(REIT)相場が急反発している。これまで海外投資家、投資信託、金融機関がそろって売り手に回る「三重苦」により下落傾向が続いていたが、新年度入りを前に一斉に買い手に転じ始めたのが背景だ。投資するビルなどの賃料収入や分配金の拡大期待も高まっている。注目が集まるREIT相場の今後の展望や、有望銘柄を検証した。
投資口の需給改善、今後は「内部成長」が鍵に

「新たにREITファンドを設定して欲しい」。ニッセイアセットマネジメントには最近、地域金融機関からこんな要望が舞い込んだ。「新年度を前に銀行の投資意欲は高まってきている」とニッセイアセットの大島正久リード・ポートフォリオ・マネジャーはいう。

市場全体の値動きを示す東証REIT指数は3月29日時点で1794。2021年夏以降は下落基調が続き、今月13日には1667と約3年ぶりの安値を記録していたが、ここにきて急反発している。

きっかけは日銀だ。3月半ばにマイナス金利政策解除の観測が台頭した際、海外ヘッジファンドの間で「金利上昇で悪影響を受けるREITを売り持ちにする戦略が鉄板になっていた」(モルガン・スタンレーMUFG証券の竹村淳郎アナリスト)。19日に日銀が実際に政策解除を決めた後は一転して利益確定のための買い戻しが広がり、REIT相場が押し上げられた。

中長期目線の海外勢の一部も「押し目買い」を入れ始めている。ブラックロックは3月22日に大量保有報告書を提出した。三菱地所物流リート投資法人グローバル・ワン不動産投資法人など複数のREITの持ち高を増やしたことが明らかになった。

昨夏から続くREIT投信の資金流出が止まる可能性も出てきた。SMBC日興証券によると、REIT投信(上場投資信託=ETFは除く)の3月の月間資金流入額は27日までで約96億円。流入に転じるのは7カ月ぶりだ。

REIT投信に多い「毎月分配型」が新しい少額投資非課税制度(NISA)の対象外となった影響もあって、解約の動きが目立っていた。ただ相場下落で割安感が出てきたこともあり、最近は一部の販売会社で「REIT投信を個人向けに積極的に販売していこうという機運が出てきた」(国内運用会社)。

今年に入り売り圧力を強めていた銀行も「4月の新年度入り後は買い手に回る」との見方が多い。REITは予想分配金利回りが4%を超え、10年物国債とのイールドスプレッド(利回り差)は日銀のマイナス金利政策解除後も3%を超える。利回りを得たい銀行には魅力的だ。

これまで需給面の「三重苦」となっていた海外勢、投信、銀行の売りが止まり、買いに転じそうなだけに、REIT相場の上昇は当面継続するとの期待も強い。SMBC日興証券の鳥井裕史シニアアナリストは「東証REIT指数は2000までは上がる」と予想する。

一方で、東証REIT指数が2000を超えて上昇していくには「REIT側の経営意識の変化が必要」(みずほ証券の大畠陽介シニアアナリスト)との指摘もある。REITはこれまで、投資するビルなどの稼働率を重視する傾向が強かった。経済がデフレからインフレに転換するなか「目先の稼働率が少し落ちたとしても、より積極的に賃料を引き上げる戦略に移行したほうが中長期的な収益拡大を狙える」(大畠氏)。

実際にこうした戦略に切り替える動きもある。アドバンス・レジデンス投資法人は3月の決算説明会で、東京23区のうち約50%を対象に稼働率低下のリスクを取ってでも賃料上昇を図る方針を打ち出した。

不動産価格が高止まりし、借入金利の上昇も想定されるなか、REITが新規に物件を取得して分配金を増やす「外部成長」を実現するのは容易ではない。保有物件の賃料上昇という「内部成長」の実現と分配金拡大の成否が、REIT相場の上昇の持続性を左右しそうだ。
ホテル宿泊料上昇、「NAV1倍割れ」銘柄にも注目

足元の個別銘柄の値動きに目を移すと、ホテルに投資するREITの好調さが目立つ。インバウンド(訪日外国人)需要の回復などを背景に、宿泊料が上昇しているのが理由だ。1部屋当たりの収益力を示す「RevPAR」(客室稼働率×平均単価)をみると、ジャパン・ホテル・リート投資法人やインヴィンシブル投資法人などはコロナ前の19年を上回って推移している。東京証券取引所に上場するREITの投資口価格(株価に相当)をみても、昨年末比の上昇率の上位にはホテル系銘柄が目立つ。

株のPBRに当たるNAV倍率が市場平均で1倍を大きく割れているだけに、自己投資口買いが進むとの期待が高まっている銘柄も多い。オフィスビルなど不動産価格の高騰が続くなか「物件の売却益を自己投資口買いに充てるREITが増えるのではないか」(岡三証券の並木幹郎シニアアナリスト)との指摘もある。

実例も出てきている。ジャパンエクセレント投資法人は2月中旬、東京都内の築古物件の売却代金のうち、最大20億円を実質的に自己投資口買いに充てると発表。同銘柄のNAV倍率は0.7倍台で推移していたが、発表翌営業日に投資口価格は4%上昇した。運用会社のジャパンエクセレントアセットマネジメント(東京・港)の香山秀一郎社長は「投資口価格が割安に放置されていることを市場に示す必要があると感じた」と話す。

NAV1倍割れ銘柄が多い状況はM&A(合併・買収)への期待にもつながる。株式市場ではここ数年、積極的な自社株買いやM&Aが進み、日経平均株価の史上最高値更新につながった。同様の流れがREITにも訪れれば、相場の回復は力強さを増しそうだ。

(松本裕子、小池颯)

[日経ヴェリタス2024年3月31日号を再構成]