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私と経済の掲示板

政府、日銀との共同声明見直し論 物価目標で慎重意見も

政府内の一部に、政府と日銀が定めたアコード(共同声明)の見直し論が浮上している。2%の物価上昇目標の達成時期や範囲をより柔軟にしたり、表現の一部を修正したりといった案が取り沙汰されている。黒田東彦総裁が進めてきた異次元緩和の根拠の一つとなってきた共同声明の見直しは将来の緩和修正につながる可能性があるが、政府・日銀には慎重論もあり、先行きは見通しにくい。

共同声明は2013年1月に当時の安倍晋三政権と白川方明総裁時代の日銀が結んだ。「物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%」とし、「できるだけ早期に実現することを目指す」と明記している。法的な拘束力はないが、現在の大規模な金融緩和の根拠の一つとなっている。

ただ、物価2%の実現を最優先して大規模緩和を続けてきたことが、銀行収益の圧迫や市場機能の低下、急激な円安などの副作用をもたらしているとの指摘もある。物価上昇目標の実現時期を中長期の目標としたり、2%自体に幅を持たせ、日銀の政策運営の柔軟性を高めるべきだとの意見がある。22年10月の消費者物価指数(生鮮食品除く)の前年同月比上昇率は3.6%と2%を上回る。

23年は共同声明から10年の節目で、春には日銀総裁も交代する見込みだ。政府内ではこれを機に、共同声明の表現の見直しも議論すべきだとの意見がささやかれ始めた。2%の物価上昇目標に縛られる日銀の選択肢の幅を広げることで、円安などが過度に進まないようにしたいという思惑もあるとみられる。

もっとも、実現するかはなお不透明だ。焦点になっている2%目標について、「できるだけ早期に実現することを目指す」の文言を削除したり、「前後」といった幅を持たせた表現を加えたりした場合、「デフレ脱却に向けた政府のメッセージが弱まるのでは」といった声が出ている。

ほかの共同声明の文言についても、日銀関係者からは「微修正はともかく、核となる表現は現時点で見直す必要はない」との意見が聞かれる。政府内にも「今の共同声明の表現はよくできている。見直すにしても、どう変えるのかが難しい」との声がある。いずれにせよ、見直しの是非を含めた具体的な協議は、日銀の新総裁が誕生してからになる可能性が高い。