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シャープ(株)【6753】の掲示板 2024/03/23〜2024/05/01

イネの芽が最大約4倍に成長--シャープ、プラズマクラスターイオンで生育実証 - (page 2)

安蔵靖志2024年03月23日 09時00分

イネ内のエネルギー生成を指示する働きが約3倍にまで増加

 次に行われた実験では、プラズマクラスターイオン照射が代謝レベルでの反応を誘導しているのかどうかを検証するため、嫌気代謝の反応に関わる酵素遺伝子の働きを調べた。

 「嫌気代謝では、酸素を消費せずにでんぷん分解、解糖系、アルコール発酵といわれる代謝を進め、その中で生体内のエネルギー通貨として知られる『ATP(アデノシン三リン酸)』という物質を生み出す。今回対象とした酵素遺伝子に関しては、でんぷんの分解の初めの反応に関わる『アミラーゼ(Amy)』と、解糖系およびアルコール発酵に関わる『ビルビン酸キナーゼ(PK)』、『ピルビン酸脱炭酸酵素(PDC)、『アルコール脱水素酵素(ADH)』の計4つの遺伝子に着目した」(山下助教)

 これら4つの遺伝子の働きを調べたところ、でんぷん分解の初めの反応に関わるアミラーゼの働きが約3倍に増加していることが分かった。

「ほかの遺伝子に関しても、プラズマクラスターイオン照射による増加傾向が確認できた」(山下助教)

これらの実験の結果、プラズマクラスターイオンを照射することで種子の発芽段階におけるエネルギーの代謝活性化が誘導され、それに伴う発芽促進や初期生育促進が引き起こされるメカニズムが分かった。

 一家准教授は「プラズマクラスターイオンによる植物の生育促進効果が大いに期待できることに加えて、植物の機能性や品質を強化できる可能性についても見いだしている」と語った。

 「わさび菜を用いた試験では抗酸化作用や肥満・糖尿病予防作用など健康機能性が知られている機能性成分『アントシアニン』の蓄積が誘導されることが分かった。パクチーを用いた試験では、抗酸化作用のある『βカロテン』の蓄積・顕著な増加が確認され、実際に植物原料の抗酸化活性が増加していることも確認できた。バイオ産業において植物機能性の成分市場は注目を集める成長市場であり、今後プラズマクラスター技術による植物の機能性成分の強化という応用展開も大いに期待できると考えられる。我々のグループも、この作用検証を随時進めていきたいと考えている」(一家准教授)

研究結果のまとめとして一家准教授は次のように語った。

 「発芽から育苗までの期間にプラズマクラスターイオンを用いることで、栽培期間を短縮し、生産コストを下げるなど、実際の作物栽培にも応用展開できるという非常に有益な結果だった。植物工場においては、日本国内ではレタスなどの葉物が主流だが、国際的には、イネなどの穀物への適用も進み始めており、非常に意義のある研究成果だと考えている。今後、実用化に向けてこの研究をさらに発展させ、社会課題の解決に貢献されることを期待している」(一家准教授)

 今回の検証結果についてSmart Appliances & Solutions事業本部 プラズマクラスター・ヘルスケア事業部 副事業部長の岡嶋弘昌氏は「露地以外の栽培施設への導入の可能性が広がった」と語った。

 「われわれは過去に植物工場の方々から『食品を扱っているので、植物内で何が起こってるかわからないものの導入はなかなか難しい』という意見をいただいていた。今回、プラズマクラスターを植物に直接照射することで、植物が本来持っているエネルギー生成を指示する働きが約3倍に増え、その結果として発芽した芽の大きさが約4倍に伸長することが分かった。生育のスタートダッシュに貢献すると考えており、この内容を今後説明していきたい」(岡嶋氏)

プラズマクラスターイオンの植物応用、デメリットはひとつ

 植物には、レタスやキャベツなどのように光で発芽が促進される植物と、イネ、トウモロコシ、ほうれん草などのように光で発芽を促進できない植物があります。前者にはLEDの光による発芽促進が行われるが、後者には当然LEDの活用は行われていない。

 「光で発芽が促進されない植物の発芽促進に対しても、われわれのプラズマクラスター技術の活用を新たに提案できると考えている。また、光によって発芽が促進されるレタスのような植物でも生育の促進効果が出ている。当社の明るさ40W相当の蛍光灯レベルのLEDは消費電力が約21W程度あるのに対し、プラズマクラスターイオン発生器は4台で約3Wと消費電力が非常に小さい。LEDの活用状況によっては、LEDから置き換え、あるいは同時利用というところでの期待も持てると思う」(岡嶋氏)

 2つ目の意義として、プラズマクラスター技術が初期以降の生育過程においても効果が期待できると岡嶋氏は語った。
(C-NET)