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三菱電機(株)【6503】の掲示板 2023/10/14〜2024/01/30

見えない真因はこう見抜く、性能不正やリコール取材の心構え

前編において、品質不正やリコールに関する取材や記事の執筆には、しかるべき条件を備えていなければならないと述べました。中でも「客観的な正しさを担保すること」が大切となります。鋭い指摘をしたつもりが、実は間違っていたというのでは目も当てられません。
記者としては客観的な正しさ、もしくは正しいと信じるに足る十分な根拠を得られるまで取材を行うことになりますが、そのための最も強力な根拠が数字や数式となります。
例えば、日経クロステックでは物理式を基に、三菱電機の業務用エアコン(室内機「VMM」シリーズ)の騒音不正を指摘しました。業務用エアコンでは吹き出し口から冷風や温風を流して空調を行うため、常に騒音の問題がつきまといます。顧客は静かな空調を望むので、業務用エアコンでは静音性が省エネ性に次いで重要な性能、すなわちセールスポイントとなっています。実際、いかに騒音を抑えるかで、これまで各社が開発競争を繰り広げてきました。
具体的に、ここで言う物理式とは「騒音変化の式」となります。これは流体力学を踏まえたもので、n乗のところのnは5もしくは6となることが分かっています。これらは専門家への取材および関連論文で確認しました。
騒音値は風量の条件によって変化します。測定における風量の条件は決まっており、風量(弱)は29.5 m 3/min、風量(強)が42.0 m 3/minとなっています。この条件の下、三菱電機は冷房能力が16.0kWの製品の騒音値について、風量(弱)時に「42dB」、風量(強)時に「45dB」とカタログに記載して販売しました。騒音変化は45-42=「3dB」となっていました。
ところが、先の騒音変化の式に風量(弱)と風量(強)の数字を入れ、さらに三菱電機側に有利になるようにn=5を代入すると、「7.7dB」と算出されました。これが騒音変化の理論値です。つまり、騒音変化は最低でも7.7dB、実際にはここに損失分が加わるので7.7dB以上になるはずなのです。
当たり前の話ですが、世の中の工業製品は全て物理法則に従って動いています。物理式を超越した性能を出すことはあり得ません。従って、これをもって日経クロステックは、この業務用エアコンを「騒音不正」として報じました。

三菱電機(株)【6503】 見えない真因はこう見抜く、性能不正やリコール取材の心構え  前編において、品質不正やリコールに関する取材や記事の執筆には、しかるべき条件を備えていなければならないと述べました。中でも「客観的な正しさを担保すること」が大切となります。鋭い指摘をしたつもりが、実は間違っていたというのでは目も当てられません。 記者としては客観的な正しさ、もしくは正しいと信じるに足る十分な根拠を得られるまで取材を行うことになりますが、そのための最も強力な根拠が数字や数式となります。 例えば、日経クロステックでは物理式を基に、三菱電機の業務用エアコン(室内機「VMM」シリーズ)の騒音不正を指摘しました。業務用エアコンでは吹き出し口から冷風や温風を流して空調を行うため、常に騒音の問題がつきまといます。顧客は静かな空調を望むので、業務用エアコンでは静音性が省エネ性に次いで重要な性能、すなわちセールスポイントとなっています。実際、いかに騒音を抑えるかで、これまで各社が開発競争を繰り広げてきました。 具体的に、ここで言う物理式とは「騒音変化の式」となります。これは流体力学を踏まえたもので、n乗のところのnは5もしくは6となることが分かっています。これらは専門家への取材および関連論文で確認しました。 騒音値は風量の条件によって変化します。測定における風量の条件は決まっており、風量(弱)は29.5 m 3/min、風量(強)が42.0 m 3/minとなっています。この条件の下、三菱電機は冷房能力が16.0kWの製品の騒音値について、風量(弱)時に「42dB」、風量(強)時に「45dB」とカタログに記載して販売しました。騒音変化は45-42=「3dB」となっていました。 ところが、先の騒音変化の式に風量(弱)と風量(強)の数字を入れ、さらに三菱電機側に有利になるようにn=5を代入すると、「7.7dB」と算出されました。これが騒音変化の理論値です。つまり、騒音変化は最低でも7.7dB、実際にはここに損失分が加わるので7.7dB以上になるはずなのです。 当たり前の話ですが、世の中の工業製品は全て物理法則に従って動いています。物理式を超越した性能を出すことはあり得ません。従って、これをもって日経クロステックは、この業務用エアコンを「騒音不正」として報じました。