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【JPY】日銀短観・四半期大企業製造業業況判断の掲示板

今年の日銀金融政策、岸田政権が物価高懸念なら調整との見方も
1/17(月) 8:30配信

(ブルームバーグ):

2022年の日本銀行の金融政策運営を巡り、エコノミストは今夏に参院選を控えている岸田政権の物価高への対応に注目しており、政権内で懸念が強まった場合は日銀の政策調整もあり得るとの見方が出ている。

ブルームバーグのエコノミスト調査(5-12日実施)では、8割が物価上昇や円安進行に対応して日銀が年内に何らかの措置を迫られる可能性は「低い」とみているが、原材料価格の高騰や円安に伴う物価の上振れをリスクに挙げる声が増している。

東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは、「今年日銀が政策変更を行うことになるとすれば、インフレ率上昇に国民が強い不満を表し、政府から対応を打診されて、日銀が動くケースだろう」との見方を示す。

日本の消費者物価(除く生鮮食品)は昨年11月に前年比0.5%上昇と低水準にとどまるが、携帯電話通信料の大幅値下げの影響が一巡する4月以降は1%超えが見込まれている。インフレ高進が続く欧米では、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに前傾姿勢となるなどインフレ抑制が政権と中央銀行の最優先課題となっている。

クレディ・スイス証券の白川浩道副会長兼チーフエコノミストは、「物価高、資産価格高騰に対する国民感情と、それに対する政治家、政権の対応が最大の関心」と指摘する。米国の状況を踏まえて、「資産インフレを含む国民のインフレに対する嫌悪感が金融政策運営に決定的に重要な影響を与える」と主張する。

参院選

今年は7月25日に参院議員の半数が任期満了を迎える。岸田文雄首相にとっては、自民党単独で絶対安定多数を確保した昨年10月の衆院選に続き、参院選の結果は長期政権の基盤を築くための試金石となる。

シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは、輸入物価を押し上げる円安に関して「政府の円安に対する警戒感は、参議院選を前に既に高まりやすい状況になっているように見受けられる」と指摘する。

物価と為替の動向次第では、日銀は物価目標達成に向けた緩和策継続とのはざまで難しいかじ取りを迫られる。エコノミストの多くは政策変更を伴わないコミュニケーションで対応するとみるが、イールドカーブコントロール(YCC)での長めの金利目標の年限(10年)短期化や長期金利の許容変動幅拡大を行うとの見方もある。

法政大学大学院の真壁昭夫教授は、現在上下0.25%程度となっている長期金利の変動許容幅を「拡大する可能性がある」とみている。

総裁人事

23年春に任期満了を迎える黒田東彦総裁と2人の副総裁の後任人事を控えていることも、政権と日銀との距離を縮める要因になるとみられている。正副総裁を含む日銀政策委員の人事は国会の同意が必要で、政府が人選を行うためだ。

エコノミスト調査では、今年の日銀関連の最大の注目点は「黒田総裁の後任人事を巡る動き」が40%と最多。「物価動向とそれが金融政策や日本経済に与える影響」の30%、「日米の金融政策の乖離(かいり)とそれによる円相場への影響」の19%を上回った。

みずほ証券の上野泰成チーフマーケットエコノミストは、「岸田内閣はアベノミクスの基本路線を継承しており、政治の世界で円高恐怖症は根強い」とし、「日銀総裁・副総裁の交代を控える過渡期に抜本的政策変更は考えにくい」とみる。

クレディ・アグリコル証券の森田京平チーフエコノミストは、7月の審議委員2人を含め、政策委員9人のうち5人が来年4月までに任期満了となる点に注目。「どのような組織も決定部隊の陣容の過半が変われば、組織としてのDNAも変わりやすい」とし、「YCCの短期化を含む政策修正のトリガーになる可能性」を見込む。

(c)2022 Bloomberg L.P.