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【不動産市場】テナントの賃料負担力が明暗を分けるJリートの騰落率

三菱UFJ信託銀行 不動産コンサルティング部 リサーチヘッド 大溝 日出夫 三菱UFJ信託銀行 不動産コンサルティング部 リサーチヘッド 大溝 日出夫

〔図表〕特化型リートの投資口価格の前年同日比騰落率(5月15日現在) 〔図表〕特化型リートの投資口価格の前年同日比騰落率(5月15日現在)

 本誌2月17日号にて、新型コロナウイルスを含むいくつかの事象を挙げ、「国内経済に影響を与えるリスクがいつどこで顕在化するか予断を許さない」と述べたが、その後、新型ウイルスの拡散により世界の様相は一変した。日本の不動産市場における取引量や価格は、一度は下降トレンドに向かうことを余儀なくされるだろう。
 東証リート指数は、コロナ禍前は2,200以上で推移していたが、5月半ばでは1,600前後の水準となってしまっている。しかし、投資対象の用途を一つに絞っている特化型リートを個別に見ると、明暗が分かれている。図表は、5月15日時点における各種特化型リート・投資口価格の1年前からの騰落率の分布を示したものである。
 大きく下落しているのが、ホテルと商業施設である。入国規制や外出自粛で利用者の激減に見舞われ、コロナ禍の影響が最も顕在化したセクターである。大幅な売上げの減少がキャッシュフローにも影響を及ぼしている。ホテルや商業施設の賃料は、固定部分に売上連動の変動部分を組み合わせて決めることが多いが、足元では、変動部分以上の賃料の支払い猶予や減免の要請が、借主からオーナーに多く寄せられていると聞く。
 オフィスビルも賃料下落を懸念してか、ネガティブな評価となっている。しかしホテル・商業施設に比べると、今のところ賃料減額等は大きく表面化していないようだ。テナント企業が現在の賃料を負担し続けていけるかどうか、今後の業績次第という状況であろう。それとは別に、在宅勤務の広がりからオフィス需要への影響が出てくる可能性もある。
 住宅は、比較的評価されているようだ。リーマンショック時も同様であったが、個人が借主の住宅家賃は、好不況に大きく影響されず安定的という特徴がある。
 この情勢下にあって好調なのが物流施設である。企業活動の停滞による物量の減少はあるものの、近年は、ネット通販(EC)の発達によりBtoCの宅配ニーズを取り込んで増加してきた。自粛情勢下でもモノの消費は大きく減ることはなく、むしろEC需要は増えている。
 このように、リートを通して見る不動産の評価は、テナントの賃料負担力が大きな要素となっている。今後、世界や日本においてコロナ禍後の出口戦略が早期に実現して機能するならば、ホテルや商業施設が回復していくシナリオになるだろう。しかし、コロナ禍によって世界経済が鍋底型に長期間停滞する可能性も指摘されており、そうなると、企業が賃借するオフィス、そして個人が賃借する住宅の評価までが引き下げられる恐れがある。(「週刊金融財政事情」2020年6月8日号より転載)

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