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「オンラインデート」の新需要がコロナで露わに、公開1週間で累計1万組利用

Photo:FilippoBacci/gettyimages Photo:FilippoBacci/gettyimages

 アフターコロナで見られるのは、新たな恋愛スタイルかもしれない――。マッチングサービス大手の「Pairs」や「タップル誕生」で、ビデオチャットなどを通じてデートを楽しむ「オンラインデート」の人気が加速している。タップル誕生は、開始から1週間で累計マッチング数が1万組を超えたと発表している。“直接会ってはいないけど、付き合う”はなぜ若者に受け入れられるのか。そこには、新型コロナウイルスが露わにした「新たな恋愛のスタイル」があった。(ライター 福岡夏樹、ダイヤモンド編集部 岩本有平)

● 「オンラインデート」のカテゴリ公開から1週間 累計マッチング数は1万組に

 「タップル誕生」(以下タップル)は、「趣味でつながる」をテーマにしたマッチングアプリ。グルメや映画、スポーツ観戦など、趣味をきっかけに恋愛相手を見つけることができる。ターゲット層は20代前半。2014年5月にリリースされ、現在発表されている会員数は500万人以上。マッチング数は延べ2億組。

 タップルには、数々の趣味カテゴリーがある。件の「オンラインデート」は、そうしたカテゴリーから共通の趣味を持つユーザー同士が、次のステップへ進むときのいち機能だ。お互いに合意すると、デート日までのやりとりができるメッセージ画面へ移動。そして、ビデオチャットやボイスチャットを使ってデートできる。

 ユーザーたちは宅飲みや料理を作りながら話すほか、現在日本テレビ系列で放送されている「野ブタ。をプロデュース」を一緒に鑑賞。なかには、Nintendo Switch用ゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」で事実上のオンラインデートを行う人もいるという。宅飲みでは、オンライン飲み会サービス「たくのむ」と連携している。

 実際に利用したユーザーの声はどうなのか。タップル以外でオンラインデートを利用したことがある女性に話を聞くと「マッチングサービスで出会った人とすぐに付き合うかどうかわからないうえに、外出自粛でいつ会えるかもわからない。今は関係を長く続けることがベストなので、オンラインデートは合っている」と話す。また「オンラインデートでは、(性格や言動に難のある)いわゆる“地雷”など、望まない出会いを避けられるので、真面目に出会いを求める人の割合が増えるのでは」という声もある。

● 「オンライン上で会うのが普通」 変化する20代の恋愛観

 新型コロナウイルスの外出自粛で「恋人がほしい」となるところまでは容易に想像できるが、本当にそれだけだろうか。

 タップルを運営するマッチングエージェント代表は、飯塚勇太氏。写真共有サービス「My365」(2019年3月にサービス終了)の生みの親というと、ピンとくる人がいるかもしれない。

 マッチングエージェント前代表の退任が決まったタイミングで、サイバーエージェント代表の藤田晋氏から白羽の矢を立てられた。そんな飯塚氏が代表に就任したのは、2020年3月。世の中はすでに、新型コロナ騒動の真っ只中――。

 「感染者数が増えていくなか、恋愛市場に関しても影響が出ることは予測できました。タップルの価値は、男女の出会いを創出すること。なかでも、デートを経てカップルが誕生することに、体験価値がありました。でも、それができなくなってしまった。足元の数字が下がっていたわけではありませんでしたが、このままでは中長期的リスクは避けられません。そこで考えたのが、オンラインデートだったのです」(飯塚氏)

 そして公開1週間で累計マッチング数1万組を突破。タップル利用者の約3割がオンラインデートへ移行した。すんなりと受け入れられた理由は何だったのか。

 「代表に就任して驚いたのは、今の若い世代とこれまでの世代では、恋愛スタイルが異なること。以前までは、恋愛=実際に会って話したり、デートしたりするのが一般的でした。一方で、若い世代は『アプリを使って恋愛する』という言葉がよく使われるほど、オンライン上で、恋愛のような人生を左右する選択をする人が多いのです」(飯塚氏)

 飯塚氏によると、FaceTimeを1日中つなぎっぱなしているカップルもいれば、オンラインゲーム上でデートするカップルもいる。タップルのおもなユーザー層である20代前半の男女にとって、オンライン上で出会ったり、デートしたりすることに違和感はなかったのだ。

 「女性ユーザーからは、『外出の準備がないので気軽』のほか、『すぐに会わないから安心』といった声もいただいています。不安を感じればその場でやりとりを断ち切れるので、その点は安心安全と言えますね」(飯塚氏)

● 最大手「Pairs」はアプリ内に新機能 15分間限定の「ビデオデート」を導入

 一方で、4月20日からアプリ内にビデオ通話機能「ビデオデート」を導入したのは、マッチングサービス最大手であるエウレカの「Pairs」だ。Pairsは累計ユーザー1000万人、マッチング数は非公開ながら、実際に恋人になって退会したユーザーは25万人以上となっている。

 Pairsのビデオデートを使うと、アプリ内でマッチングした男女が、最大15分間のビデオデートを楽しむことができる。機能の提供をしたばかりということもあり、利用者数などの詳細は公開していないが、提供開始から5日で「恋人ができた」というユーザーも現れた。

 「ビデオデート機能はもともと構想していたもので、今年の年末にもリリースできるよう準備していました。やはりメッセージ、テキストだけでは分からないこともあると思っていたので。そこにきてこの状況(コロナウイルスの感染拡大)もあり、リリースを前倒ししました。非常事態宣言の出る1週間ほど前から今後の展開を想定しており、オンラインで楽しめる機能をそろえていこうと社内で話していました」(エウレカ執行役員の金田悠希氏)

 同社がマッチングアプリ内にビデオデート機能を導入した最大の理由は、コントロールのしやすさだ。会員同士とはいえ、いざビデオで話してみると、マナー違反があったり、会話が弾まないケースがあったりもする。そんなときのためにあらかじめ制限時間を設定し、またAIで動画を解析することで、会話内容自体には触れず、不適切な動画が配信されていないかのチェックもおこなっている。

 Pairsもタップル同様、ユーザー数などはコロナの影響を受けていないが、ユーザー間でのメッセージの件数自体はこれまでより15%程度増加しているのだという。金田氏は今後Pairs上で(1)オフラインで実際に会う前に、会話のハードルを下げる、(2)安心安全でセキュリティやプライバシー面でのアップデートを行う、(3)オンラインであっても楽しめる――の3点を意識した機能を提供していくとした。

● 「最初のデートはオンラインで」 アフターコロナのマッチングアプリ市場

 では、若い世代のスタンダードとして、オンラインデートは定着するのだろうか。それとも、新型コロナウイルス期の一過性に終わるのか。

 「会議をオンライン化したことで、効率が上がった例もあります。それによって『以前の働き方には戻れない』と話す人もいますよね。同様に、デートもオンライン化することでマッチング総数が増え、いい人に出会える確率は上がります。僕としては、アフターコロナにおいて、オンラインデートが一般的になる可能性はあると考えています」(飯塚氏)

 これは、マッチングアプリ市場そのものが盛り上がりつつあることも追い風になっていると飯塚氏は続ける。

 「マッチングアプリ市場は今、実際に付き合ったり結婚したりするカップルが誕生し、実例とともにユーザーが増え続けています。オンラインデートによって恋愛スタイルがアップデートされることは、ビジネスとしてはもちろん、社会的にもプラスです。『最初のデートはオンラインで』を根付かせられるかどうかは、我々マッチングアプリ業界を大きく左右します」(飯塚氏)

 金田氏は、ITリテラシーの高くないユーザーに対して、「(オンラインデートの)裾野を広げる努力は必要だ」と課題感を示した上でこう語る。

 「『パートナーが見つかる』というマッチングアプリの役割は変わりません。ですがその形や人々との関わり方は、時代や社会情勢で変わると思っています。そういう意味では、オフラインでできていたコミュニケーションを、オンラインでもできるようにしていかなければいけません」(金田氏)

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