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実際どれくらいお得?電車の全線「サブスク」

東急が発売した「サブスクパス」。実証実験は新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期になっている(編集部撮影) 東急が発売した「サブスクパス」。実証実験は新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期になっている(編集部撮影)

 東急は今年1月から、史上初の「交通機関と生活サービスをセットにしたサブスクリプションパス」である「東急線・東急バス サブスクパス」を実験的に発売した。

サブスクリプションとは定額制サービスのことで、身近なものでいえば海外ドラマなどが見放題のネットフリックスやHuluなどがおなじみだろう。

 鉄道やバス事業は基本的に何人乗ろうが費用が固定化されているビジネスなので、筆者は携帯電話の定額制やダブル定額が出た頃あたりから、固定費がほとんどの鉄道会社はなぜやろうとしないのかと思っていた。地下鉄は全線定期券というものがあるが、郊外へ伸びる私鉄ではようやく全線定額制のパスが登場したわけだ。

 「サブスクパス」の利用期間は3月から始まる予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて残念ながら延期となってしまった。ただ、延期ではあるものの実施する予定であり、その結果を踏まえて導入の検討をするという。コロナウイルスの猛威が終息し、実証実験が行える世の中になることを待ちたい。

■どんなパスだったのか

 さて、本来ならまだ販売期間だったこの「サブスクパス」、利用者にメリットがある内容になっているのだろうか。今後広がっていく可能性も踏まえ、あえて今検証してみたい。

 今回発売のサブスクパスは、電車全線乗り放題、東急バス全線乗り放題、東急グループの「しぶそば」1日1回までもり・かけそば(320円)無料、映画館「109シネマズ」で映画見放題、シェアサイクルの電動自転車乗り放題といった内容で、以下のような組み合わせメニューとなっている。

電車・バス・そば:2万3500円
電車・バス・109シネマズ:3万円
電車・バス・109シネマズ・そば:3万3500円
電車・バス・電動自転車:2万3000円

電車・バス・電動自転車・109シネマズ:3万3000円
電車・バス・電動自転車・109シネマズ・そば:3万6500円
電車・バス・電動自転車・そば:2万6500円
電車・電動自転車:1万8000円

 これらをバラすと以下のように値段を分割でき、それぞれどんな使い方をすれば元が取れるかの参考になる。

電車:1万5000円
バス:5000円
電動自転車:3000円
109シネマズ:1万円
そば:3500円

■電車は元を取るのは大変? 

 ■鉄道

 電車は、単純な会社と家の往復だけなら普通の定期券のほうがいい。例えば、最短経路かつ東急線で最長距離と思われる渋谷・大井町―中央林間の定期券が1カ月1万2450円だ。

また、以前の記事(買い替え時にひと工夫、定期券の『ケチケチ術』)でも取り上げたが、例えば渋谷―菊名間の定期・1カ月9440円を持っている人が横浜へもよく出かけるという場合、定期券の区間を横浜―渋谷間に変えても1カ月1万110円で、差額は670円。菊名―横浜間(157円・ICカード運賃)を月5回以上乗れば元が取れる。横浜へ出かけられればいいという人はこれで事足りる。

 だが、2区間以上の定期券を買う人にはメリットがある。月1万5000円で好きなルートで通勤も可能になる。さまざまな地下鉄路線に乗り入れるルートを持つ東急ならではの使い方だ。東京の地下鉄にはメトロ、都営ともにサブスクパスに相当する「全線定期券」があるが、こちらも2区間以上、T字形の経路の定期を作るような人向けの価格設定となっている。

 例えば菊名―渋谷間(1カ月1万110円)と、田園調布―目黒間(1カ月5960円)を組み合わせたり、長津田―渋谷間(1カ月1万1270円)と二子玉川―大井町間(1カ月7530円)を組み合わせたりといった定期券が欲しかったという人にとってはお得だ。

 菊名―渋谷、または目黒間という2ルートを使う場合、通常は菊名―渋谷間(1カ月1万110円)の定期券に加えて田園調布―目黒間の定期券(1カ月5960円)が必要になるが、サブスクパスなら4890円で目黒ルートも選べるようになる。長津田―渋谷/大井町間の人なら、長津田―渋谷間1万1270円に通常は+7530円(二子玉川―大井町間の定期券1カ月分)のところ、プラス3730円と半分の追加額で大井町ルートも選べるようになる。通勤距離が短くても副業で動き回るタイプの人にもいいかもしれない。

 ■バス

 バスが1カ月5000円は破格だ!  25回、12往復半で元が取れる。東急バス全線定期券は月9850円、類似のもので言うと京王バスの「モットクパス」(同じ運賃の区間ならどこでも乗れる金額式定期券)でも210円区間用で月9390円なので、これはかなりお得だ。

 バスの全線定期でありがたみを感じるのは複数路線に乗り継いだときだ。筆者も京王バスの「モットクパス」を使い、通勤のほかにも区役所へ行ったり、新宿に映画を観に行ったり、渋谷にサプリと日用品を買いに2路線乗り継いで行くといった使い方をしている。

 こういった使い方で1日5回も乗れば1000円は超えるはずのところ、1日あたり313円だ。従来の全線定期券でもものすごくおトクなのに、東急サブスクパスはこれを月5000円、1日あたり167円にしようというのだから、大変太っ腹である! 毎日片道1回乗るだけで元が取れる水準だ。

 ■そば

 もともと、同じ内容と値段で「しぶそば定期券」3500円がある。320円のもり・かけそばが1日1杯食べられるので、11回食べれば元が取れる。

 30日で割れば「もり」「かけ」が1杯120円弱。毎日食べれば某学園の土地代の値引き並みのお得感を実感できるだろう。だが毎日は飽きるのではないか。追加購入を狙った天ぷらのラインナップの充実など、お客が「飽きない」ように商いできるかが普及の課題となるだろう。

 ■映画

 一般が1900円なので、月6本以上見ればお得だ。しかし、そんなに見るだろうか?  月内すべての映画を見る人か、同じ映画を2~3回じっくり見る人向けのコースと言えるのではないか。

 ■電動自転車

 電動自転車は、東急が2011年に始めたサイクルシェアのサービスである。通常は3150円だが、サブスクパスだと計算上3000円となるので150円だけ安い。もっとも、東急線の電車定期券利用者は通常は割引価格の2620円になるところ、サブスクパスでは必ず電車とセットになるのに割引がないところが残念である。

 だが、自転車使い放題が1日100円程度利用できるのはありがたい。駐輪場代だけでも1日100円はしそうなものだが、サイクルシェアなら駐輪場代はもちろん、自前で自転車を用意する必要もなく整備も不要だ。

■電車の価格設定は工夫の余地あり? 

 いかがだったであろうか。筆者としては、電車乗り放題1万5000円は相当使い込まないとキツいものがあると思う。

 東急の場合、運賃の平均客単価は100円である。そばのパスのように、1日あたりの利用回数を3~4回程度に制限したうえで1万円程度というコースがあれば、もっと使いやすくなり、需要もあるのではないか。バスがあれだけお得なことを考えると夢物語ではない価格設定ではなかろうか。

また、東急は複数の路線で東京メトロと直通しているので、東急線内だけだと利便性向上の効果は限定的だ。行きと帰りで経路が違えば、そのつどメトロの普通運賃を支払うことになる。乗車回数制限のうえで、東急とメトロ全線で2万円といったセットができれば、なおいいと思う。

 今回の「サブスクパス」、残念ながら新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、本来4月13日まで発売予定だった5月分は発売中止となった。だが、さまざまな分野でサブスクリプションが注目される中、今後も他社を含め同様の取り組みが行われるかどうか気になるところだ。

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