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たまり続ける「コロナ疲れ」、効果的な2つの解消法

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(文 片田 智也) ----------
新型コロナウイルスの感染拡大が止まらないなか、リモートワーク、休校、外出自粛などの「非日常」の連続で、「コロナ疲れ」ともいうべき状態にいる人も少なくないだろう。この精神的な疲労は一体どう解消すればいいのか。心理カウンセラーの片田智也氏にその対策を解説してもらった。
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いっこうに収まる気配を見せないコロナ騒動
 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。最短で本日7日にも「緊急事態宣言」が発令される見通しだ。相変わらず、マスクやトイレットペーパー不足は続き、イベント中止、外出自粛など、ストレス解消もしづらい毎日。こういった状況で広まっているのが「コロナ疲れ」だ。

 「もういい加減、疲れましたね…」

 そうつぶやいたのは通信会社に勤務する40代前半の男性、Aさん。3月に入ってすぐ在宅勤務が始まった。取引先との商談もメールと電話のみ。めったに外出することもない。「4月になれば収まるだろうと考えていた」という。

 しかし、事態は収まるどころかどんどん深刻化している。小学生の子どもも臨時休校。おかげで妻もパートを休まざるをえない。生活のリズムが崩れたことで、家のなかが「ピリピリしている」らしい。Aさん自身もイライラ、食欲不振、軽い不眠などがあるそうだ。

 「これって、うつ病とかではないですよね…?」

心が緊張するのは「危険回避モード」だから
 カウンセラーとしての経験上、「これはうつではないか?」という訴えの大半は、精神的な疲労」である。

 こういった非常事態で精神的にリラックスすることは難しい。非常事態とは「何が起こるか分からない状況」だ。どんなことが起きても対処できるよういつも気を張って、つまり緊張して過ごすことになる。問題はこの「緊張」だ。

 そもそも「緊張」とはいったい何なのだろうか? 
 私たち、ホモ・サピエンスは狩猟採集時代からほとんど進化していない。つまり、「緊張が起きるしくみも原始人のまま」ということだ。厳しい環境を生き延びるうえで緊張は重要な役割を持っていた。

 緊張は「危険から身を守る準備」である。例えば、猛獣から逃げるため筋肉を収縮させる。早くここから立ち去りたいと感じさせる。要するに「危険回避モード」なのだ。

 猛獣がうろついている茂みで楽しくランチする気にはなれないし、ましてや眠りにつけるはずもない。身を構えて少しの物音にも敏感になり、危険が通り過ぎるのをピリピリしながら待つことになる。

 ただし、緊張はあくまでも一時的なモード。まず長続きしない。しかし、今の私たちは四六時中、しかも何週間にも渡って危険回避モードを続けているわけだ。精神的に参ってしまうのは人としてむしろ当たり前のことである。

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「神経質になっている自分」に寛容になる
 社会全体が不安と緊張に包まれているようなものだ。イライラ、ピリピリ、ざわざわ。「なぜか心が落ちつかない」という人はこれからますます増えていくだろう。

 普段ならどうとも思わない些細なことでも気に障るかもしれない。

 例えば、満員電車でせきをする人が気になるとか、マスクがずっと入荷しないこと、ティッシュの残りが心もとないことなど、危険回避モードの状態は、あらゆるできごとが不安の種になる。

 こういった漠然とした不安や緊張があるとき、私たちは「ハッキリとした原因」が欲しくなる。例えば、不謹慎なことをする他人がやたらと目についたり、観なければよいのに不安を煽るニュースを無意識に追いかけたり。原因を探してはいないだろうか? 
 このとき他人や報道のような環境に目を向けてはいけない。思い通りにならないことで、よけいにイライラするからだ。

 目を向けるべきなのは「自分の不安や緊張」である。

 「それだけ神経質になっているんだな」と自分の内面に目を向ける。そして、そうなっている自分を「人間らしい」と寛容な気持ちで受けとめることだ。

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「コロナのことを考えない時間」を区切る
 非常事態が長く続く状況下で、精神的な疲労を避けるには大きく二つのことに気をつける必要がある。ひとつは「意識して時間を区切ること」だ。

 例えば、戦争の前線にいる兵士は24時間、戦っているわけではないし、いつもピリピリ過ごしていては身が持たない。だからこそ戦いの合間にポーカーを楽しんだり、家族に手紙を書いたり、意識して戦いのことを忘れてリラックスする時間を取っていた。

 感染を予防するためにこまめに手を洗ったり、アルコールを噴射したり、感染者数が増えていないか確認することは大切だ。だからといって24時間、四六時中、コロナのことを考えてピリピリする必要はない。

 できることをすべてやった上で、あとはいつもと同じように食事や趣味の時間を楽しめばよいだろう。

 趣味でなくても、集中して没頭できることなら何でもよい。なにか「時間がなくてやり残していたこと」はないだろうか? 

 例えば、本を整理したり、押し入れを片付けたり、返事が滞っていた友人に連絡するなど「いまだからこそできること」を探してみるとよいだろう。

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「そうですね」を引きだす会話をする意味
 もうひとつは「他愛もない会話をすること」である。

 「今日は暖かいですね」とか「そろそろ桜が満開ですね」など、他愛もない会話を怠ってはいけない。

 人は集団生活に適応した動物である。「他人と考えが同じであることを確認したがる」のは、人としての本能と言ってもよい。相手から「そうですね」という同意の言葉を聞くと、なぜか安心感が湧くものだ。

 緊張が続いてピリピリしているときなど「当たり前のことを言うんじゃない!」と返したくなるかもしれない。しかし、その当たり前のことを確認する時間こそ、緊張を和らげるために必要なものなのだ。

 面と向かって会話する必要はない。電話やメールでも「他愛もない会話」を意識することはできる。

 例えば、いま「コロナがいつ収まるのか不安ですね」という問いかけに同意を返さない人はいないだろう。

不安や緊張は人間関係を通じて伝染しやすい
 この状況で不安や緊張が起きない方が異常である。

 「大丈夫、人間として当たり前のことですよ。不安や緊張を軽くするため、生活を工夫しましょう」

 そう伝えるとAさんはおだやかな声でこう言った。

 「そうですね、何かできることを探してみます」

 現在、Aさん一家は、ずっと撮りためていた子どもの写真を整理する作業に取り組んでいる。

 「大変ですが、没頭しているとコロナのことは忘れますし、何より家族の会話が増えました」

 緊張感が解けたため食欲も回復し、夜も眠れるようになったという。

 いっこうに収束する気配を見せないコロナ騒動。3月28日の緊急会見で安倍晋三首相は、「この戦いは長期戦を覚悟していただく必要がある」と長期化への備えを呼びかけた。

 この非常事態はいつまで続くのか? それは誰にも分からない。

 ウイルスの感染を防ぐことはもちろん、重要だ。そしてそれと同じぐらい「不安や緊張に飲まれないこと」も重要である。

 不安や緊張というのは人間関係を介して伝染しやすい。コロナウィルスの対策と同じだ。まずは自分自身の不安や緊張を自覚すること。それを他人にうつさないこと。そして他人からうつされないことである。

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