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フルローンで買ったアパート2棟、35年後はマイナス7000万!?《楽待新聞》

(写真:不動産投資の楽待) (写真:不動産投資の楽待)

「不動産投資で失敗してしまった」と感じている相談者に、不動産投資家でファイナンシャルプランナーの五十嵐未帆さんが厳しくも愛のあるアドバイスを送るこの企画。

4人目の相談者は、2018年に2億円で新築木造アパート2棟を購入したという兵庫県の会社員・紺田元治さん(仮名・48歳)。1年半で6回退去が発生し、収支状況が悪いので不安があるという相談です。

○相談者プロフィール
紺田元治さん(仮名・48歳)会社員 兵庫県
・年収:1100万円
・金融資産:600万円
・家族構成:妻、子供3人(高2、中3、中2)

■「頭金ゼロで」というネット広告を見て……

紺田さん:今日はよろしくお願いいたします。

五十嵐さん:よろしくお願いします。さっそく、現在の状況を教えていただけますか?

紺田さん:はい。一昨年に新築木造アパートを2棟購入しまして、2年が経ちました。当初、業者からは「新築なので退去は少ないですよ」と聞いていたんですが、案外退去が多くて、埋まったら出る、埋まったら出る、みたいなのを繰り返しているのがちょっと困っています。

五十嵐さん:わかりました。不動産投資はどうして始めようと思ったんですか?

紺田さん:現在、高3と中3と中2の子供3人がいるんですが、塾の費用などがかかる時期に「頭金ゼロで……」というようなネット広告を見て興味が湧いて、そこから入っていったような感じですね。

五十嵐さん:1年半の間に6回ほど退去が発生ということですが、退去の理由は確認しましたか?

紺田さん:一応メールで受け取ってはいて、転勤が2人ほどで、あとは一身上の都合や結婚とか……。

五十嵐さん:2棟で約2億円もの融資を引くことに不安などはなかったんですか?

紺田さん:最初は1棟だけのつもりで、1億ぐらいだったのでそこまで大きな不安はなかったんですよね。1棟目のCFが少し少ないと感じて、業者から「合わせて2棟いけるよ」みたいな話があって、さすがに2億は大きいかなとは思ったんですが……シミュレーションしてみて、一応大丈夫かな、という感じで。

■この投資は……

五十嵐さん:結論から言うと、この投資は利回りの低い新築をオーバーローン・フルローンで2棟立て続けに購入した時点で終わっています。高金利ローン地獄でございます。

紺田さん:そうですか……。

五十嵐さん:楽待のCFシミュレーション機能を使って、1棟目の収支を試算してみましょう。

五十嵐さん:こういった感じでCFは当初からずっとマイナスで、35年後の累計CFはマイナス3894万円というシミュレーションになります。

紺田さん:マイナスですか……。

五十嵐さん:どうですか? このシミュレーションをご覧になって。

紺田さん:まさかこんな感じになるとは思ってなかったんで……。

■何が問題だった?

五十嵐さん:1つ1つ、問題点を指摘していきたいと思います。最初の問題点としては、物件自体の評価に見合わないオーバーローン・フルローンを引いてしまっていることです。これでは借り換えや金利交渉も難しい。木造の法定耐用年数22年に対して35年と長い融資を引いていますが、これはキャッシュが出るように見せかけるためのマジックです。

紺田さん:なるほど……そうだったんですか。

五十嵐さん:返済比率は計算しましたか?

紺田さん:いや、してないですね。

五十嵐さん:計算してみましょうか。ローン返済額を家賃収入で割ると……64%。これはよくないですよね。安全な賃貸経営を目指すなら、50%未満にしておかなければいけません。管理費やインターネット代、清掃料、空室発生時の広告費や原状回復費などを考えると、すぐにキャッシュアウトしてしまう可能性がある危険な返済比率です。

紺田さん:しっかり計算すべきでした。

五十嵐さん:あと、イールドギャップ(表面利回り-借入金利)という数字があるんですが、利回り6.8%から金利2.7%を引くと4.1%しかないんです。安全に回すためには、6%ぐらいはほしいところです。

紺田さん:そこもチェックしていませんでした。

五十嵐さん:物件の評価は自分で計算されましたか?

紺田さん:やってはみましたが、そんなによくなかったと思います。

五十嵐さん:そんなによくなかったのに買ってしまったんですか……。全国地価マップというサイトの情報を基に積算評価を計算すると、土地2585万円+建物4440万円で、7025万円。収益還元評価も、家賃収入をエリアの相場利回り8.4%で割ると7842万円。どちらも購入価格の9612万円を大きく下回っていて、実勢価格より高値掴みしているということになります。

五十嵐さん:業者さんのシミュレーションも見ていきます。入居率の試算が2年目以降ずっと95%になってるんですが、この通りに回るんだなって思いましたか?

紺田さん:いや、ここはちょっと怪しいなと思ったので、自分のシミュレーションでは少し下げて計算したんです。

五十嵐さん:それはいいことですね。私は新築の場合、入居率は90%で試算しますし、20年以降は80%ぐらいで見た方がいいと思います。それと業者さんのシミュレーションでは家賃が21年目以降ずっと同じ金額という試算になっていますが、こちらはいかがですか?

紺田さん:そこは説明のときに、「20年経ったらだいたい家賃の下落はないんで」みたいな話で、ちょっとよくわからなかったので、そのままでシミュレーションした気がしますね。

五十嵐さん:家賃が6万1000円で設定されていますが、築古になったときにどれぐらいの家賃設定になるか調べていきます。賃料相場のサイトでみると、10年後には5万円台前半ぐらいまで家賃が下がる可能性があります。そうなると、この想定の収支が得られなくなります。

五十嵐さん:次に金利ですね。変動金利なので、金利の上昇局面で上がっていく可能性があります。あとは毎月の「原状回復費等」が10万円という試算ですが、広告費や水道代、光熱費などの経費がこれだけで済むのかという問題もあります。また、このシミュレーションには不動産取得税や大規模修繕費が入っていないので、どんどん計算が違ってきます。ちなみに2棟目もCFシミュレーション上は35年後の累計CFがマイナス3298万になっています。

■改善策は?

五十嵐さん:では、解決策についてお話ししていきますね。シミュレーションをご覧になって率直にどう思われましたか?

紺田さん:問題点が多いということが分かって、物件を持ち続ける自信がなくなってしまいました。

五十嵐さん:高い金利で35年の融資を引いてしまったことが大打撃の物件なので、キャッシュに余裕があれば繰り上げ返済して融資期間を短くするという手もあります。ただ、すごく高い手数料がかかる金融機関もあるので、常に残債と相場をチェックして、築何年の物件がどれぐらいの利回りで売れているのか把握しながら、売却できるタイミングを探すことが大切です。

紺田さん:はい、考えていきます。

五十嵐さん:収支表をご自身でつけられてて素晴らしいなと思いました。細かい支出の部分も把握できるようにすると、どの金額が大きくなったり小さくなったりするか分かるのでいいです。

五十嵐さん:私がつけている「入居率管理レントロール」をお見せしますね。各部屋の最初の家賃が書いてあって、1人目が水色、2人目が黄色、3人目が緑と、部屋が何回転しているのかがすぐわかるようになっています。お名前、年齢、家賃、属性、年収も記載しています。年収に対する家賃の割合が高すぎると家賃滞納につながる可能性がありますので、できれば4分の1、高くても3分の1以内に収まっているか確認するようにしています。

五十嵐さん:もう一つの資料が「退去備忘録」です。一目でどの物件のどの部屋が空いてるか分かりますし、退去日と部屋番号、お名前、退去理由をチェックして、物件に問題があれば必ず解決するようにしています。また、退去前に申し込みが入ったら星印、退去して1カ月以内に入ったら二重丸みたいに、どの物件が入居付けがよくて、どの管理会社がしっかりと動いているかも確認しています。

五十嵐さん:しばらく賃貸経営を続けていく気があるのであれば、常に満室経営で収益を最大化し、経費削減で利益を最大化するのが使命になってきます。きちんと返済を続けて事業がプラスに回っていることが証明できれば、金利の引き下げや借り換えなどの交渉もみえてきます。

■満室にするために

五十嵐さん:満室経営に向けたお話をしていきますね。退去したときに何か客付けの努力はされましたか?

紺田さん:「したい」と管理会社には言ったんですけど、「効果がない」とかそういう話になって。

五十嵐さん:しても意味がないみたいなことを言われたんですね。でも、例えば物件清掃で綺麗にしておくとか、閑散期は早く入居付けするためにフリーレントを活用するとか、そういった取り組みはできると思います。

紺田さん:自分でできることを考えてみます。

五十嵐さん:退去されないための工夫として、私は各部屋にある設備取扱説明書というのにお礼状を入れて、少し大家さんの顔が見えるようにしています。もしかしたら値下げ交渉などがあるかもしれないんですが、そうやって親身にしてくれる大家さんだと、安心して生活できて長期入居につながっていきます。

紺田さん:勤務先の関係会社で、セキュリティ設備をわりと月額料金安めで導入できるようなんです。女性が何人か入居しているので、そういうのを入れていこうかなと思うんですけど、効果あるんでしょうか?

五十嵐さん:高いお金をかけてオートロックを入れても、木造だと簡単に乗り越えられてしまったりするんですよね。それよりは防犯カメラをつけたり、物件の周りが暗かったら夜間照明を多くしたりとか、女性でも安全を感じられる物件にするといいと思います。

紺田さん:ちょっとそのあたりも考えてみようと思います。

五十嵐さん:あと更新料を1カ月分取っていると思うんですが、更新のたび6万円払わないといけない形なので、「半月分にまけますよ」とお得感を出すことでさらに入居してもらうという手もあります。

紺田さん:そういう方法もあるんですね。

五十嵐さん:あとは3年に1度ぐらいは排水管洗浄をした方がいいでしょう。においや詰まりが退去の原因になることもありますし、排管が劣化すると10年後、20年後に水漏れで100万、200万の費用がかかる可能性も出てきます。そのときに入居者さんと会えるので、部屋が汚くなっていないか、入居者さんに何か問題がないかなどをチェックした方がいいです。

■経費削減のポイントは

五十嵐さん:収入の上限は決まっていますので、繁忙期には家賃をもう少し上げてみてもいいかもしれません。あとはやっぱり経費削減でどれだけ利益出すかということになってきますが、自主管理は難しいですか?

紺田さん:自宅と距離が離れているので、仕事をしながらだと難しいです。

五十嵐さん:できれば管理費がもう少し安くて信頼できる管理会社さんに頼めるといいですね。私が今お願いしようとしているところは1戸当たり1000円でみてくれますし、少し探してみてもいいかもしれません。あとは清掃費が月5400円なので年間6万4800円ですよね。ご自身やご家族で月1回ぐらい清掃するとか、あとはシルバー人材センターさんにお願いすれば、月1回なら1500円ぐらいに抑えられます。

紺田さん:どうすれば経費削減できるか、自分でも考えてみます。

五十嵐さん:修繕については管理会社さんに任せてばかりだとマージンがのったり高い業者さんに頼まれたりすることがあるので、しっかりと相見積もりを取って適正な金額で適正な工事をしてもらうことが重要です。管理会社さんから過剰な請求がきたら、必ずご自身で現地を見るようにしてください。

紺田さん:ぼったくられないように気を付けます。

五十嵐さん:物件を購入したからには、ご自身のすべての責任がかかってきます。いくら業者さんの営業トークがうまかったからといっても責任を押し付けることはできないですし、経営者の意識を持って頑張っていただきたいと思います。

■改善後のCFシミュレーションは?

五十嵐さん:これまでの改善策をした場合のCFシミュレーションをしてみましょう。消防点検費用も半額ぐらいに下げられると思いますし、清掃はシルバー人材センターさんに1500円で頼む。修繕費も4%ぐらいに減らして、入居率も95%。そうすると、さっきはマイナス3435万円だったのがマイナス2742万円まで改善し、最初のころは少しCFが出るようになります。こういう少しずつの経費削減でもトータルで見ると数百万円になるんです。

■楽待のCFシミュレーションは厳しすぎる?

五十嵐さん:皆さんここまで見ていただいて、楽待のCFシミュレーションが厳しすぎるからこんなにマイナス何千万にもなってしまうんだと思う方もいるかもしれません。そこで、私が今度買おうと思っている物件についてシミュレーションしてみたいと思います。

紺田さん:自分の物件とどこが違うのか、勉強させてください。

五十嵐さん:物件はターミナル駅から徒歩8分、ロフト付き10戸の新築木造物件になります。価格が1億2200万円、表面利回りが7.48%、借入額が1億400万円、金利1.375%・期間は30年です。入居率90%、諸経費は年間家賃収入の10%ぐらいで計算すると……。

五十嵐さん:このように、単年度のCFがプラスになっていて、35年後の累計CFがプラス3531万円です。なんでプラスになるかということですが、融資比率が85%ぐらいで、返済比率も46.7%に抑えています。そのため、仮に金利2.5%・35年にしてもプラス1454万円で終わるシミュレーションです。やはりフルローン・オーバーローンで融資を引くことが問題で、最低でも自己資金を1割入れることが必要かなと思います。

紺田さん:分かりました。本日は貴重なアドバイスありがとうございました。

■相談を終えて

紺田さん:正直なところ、シミュレーションの数字を見た時は、マイナスが大きくてすごくショックでした。やっぱりもっと勉強しておくべきだったと、すごく後悔しました。経費削減の工夫をして、のちのちは借り換えや金利交渉をできたらと考えています。

五十嵐さん:勉強不足なところにつけこまれてしまったわけですが、やはり業者さんに言われたことを鵜呑みにするのではなく、誰かに相談するべきだったと思います。ただ、ご自身でなんとかしようと努力していますし、きちんと満室経営をしていけば糸口が見えてくるので、頑張って経営努力を進めていただきたいと思います。



CFシミュレーションの結果を見て、想像以上の見通しの厳しさに言葉を失っていた相談者の紺田さん。しかし相談後は「できるだけ経費削減をして、打開策を探っていきたいです」と前を向いていました。

「10年ぐらい経ってどうしようもなくなってから問題の大きさに気付く人も多いことを考えると、今問題に気付けたのは早くてよかった」と五十嵐さん。「収支表をご自身で作るなど経営者の意識はしっかり持っているので、満室経営に向かって頑張っていけると思います」とエールを送っていました。

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