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美食家たちがひっそり読んでいる「ミシュラン」ではない「黄本」の正体

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ミシュラン「三ツ星」の秘密
(文 鈴木 貴博) 昨秋話題になった最高級フランス料理店を舞台にしたドラマ『グランメゾン東京』は久しぶりにキムタクらしい木村拓哉さんを見ることができた、ファンとしては嬉しい作品でした。

 同時に、そこそこグルメの私としては料理や食材を巡る描写についてなかなかに楽しむことができたドラマでもありました。

 『グランメゾン東京』はかつてパリでミシュランの二つ星レストランを経営していた天才シェフとその仲間が、挫折を経験して離散したのち、東京で再結集してグランメゾン東京という新たな料理店でミシュランの三ツ星を目指すという内容のドラマです。

 このドラマの見どころのひとつは、ミシュランガイドの審査の過程があくまでフィクションとしてではありますが詳細に描かれているところです。

 ドラマの最終回に実際のミシュランの表彰式の映像が使われているように、このドラマはミシュランガイドからの深い協力があったようですが、あくまで審査の過程は秘密です。

 とはいえ、ドラマで描かれていたように「最初にひとりの調査員が来て、次に外国人と日本人ふたり一組の調査員が来る。三ツ星を獲得するお店にはさらにもう一組の調査員が来たうえで、パリの評議会全員の承認が必要となる」といったストーリーは、高級料理店の間では都市伝説のように伝わっている話でもあり、それなりのリアリティを感じさせました。

 さて、私のような経営コンサルタントの仕事をしていると、企業の幹部の方としょっちゅうそれなりに高級な料理店で食事をすることになります。そして「ミシュラン掲載のお店はおいしいのか」とか「本当はミシュランガイドに掲載されていないあの店のほうがおいしいんじゃないか」といった話題でもよく盛り上がります。

 本当のところミシュランガイドで星をもらっているお店はどこまでおいしいのか、今回は自称「美食家」としての私なりの経験と知識から紐解いてみたいと思います。

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ミシュランガイド、本当の実力
 ドラマでも紹介されたようにミシュランガイドの三ツ星の定義は「そのために旅行する価値がある卓越した料理」で、2020年のミシュランガイド東京では11軒のレストランが三ツ星に選ばれています。

 2008年に最初のミシュランガイド東京が発行された際には三ツ星は8軒、その後2012年には16軒のように東京地区だけで見ても三ツ星のお店は増減し、その顔触れも入れ替わります。

 私も三ツ星のお店で食事をするという幸運にこれまで何度か、回数でいえば一桁の上の方という感じですが、そういった機会に恵まれています。三ツ星のお店というとお支払いの金額も気になりますが、そもそも行こうと思い立っても予約が取りにくいという意味でもとても貴重なのです。

 それで三ツ星のお店での体験がどのようなものかというと、まさにグランメゾン東京でフーディーの頂点に立つ役を演じた富永愛さんが劇中で語ったような至高の体験です。コース料理のひとさらひとさらすべての料理が驚くほどおいしい。ここは体験的にまず間違いはないところです。

 おそらく巷でよく言われる「星付きだというので出かけたが期待外れだった」とか「あの店のほうがよほどおいしい」といった評価がされるのは二つ星以下のお店だというのが、私の実体験です。

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三ツ星と二つ星の違いとは
 二つ星というのはかなりの高評価でまず外れはないのですが、それでも三ツ星との違いを感じることがしばしばあります。

 一つ星は東京でもかなり上のほうのおいしいお店が選ばれていると思いますが、すべてが網羅されているのではないし、二つ星一つ星のすべてのお店が最高においしいわけでもないというのが私の感覚です。

 ここは注意すべき点だと思いますが、ミシュランガイドというのはあくまで旅行者のためのガイドブックであって、東京の全レストランのランキングではないのです。

 東京にはレストランは約16万軒あると言われています。その中から464軒を掲載し226軒のレストランに星がつけられている。それは決して全数調査の中からの選択ではありません。

 あくまでミシュランガイドが見つけてきたお勧めのお店が掲載されているわけで、調査員が回り切れていないお店が掲載されていないのは当然のことでしょう。

 ミシュランガイド掲載店のうち星がついていない238軒はビブグルマンという5000円以下で気軽に食べられるレストランカテゴリーのお店なので、高級フレンチや日本料理でミシュランガイドから漏れている名店は、そもそものレストランの母数が東京には多いという関係で結構な数が存在するのは仕方ないことなのです。

 とはいえ逆にミシュランガイドに掲載されている一つ星や二つ星のお店の中に、「なぜ三ツ星ではないの?」と疑問を持たれるような素晴らしい店が混じっていることはよくあることで、これは食通の間での不思議だとも言われます。

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「世界のベストレストラン50」とミシュランの比較
 ドラマ『グランメゾン東京』ではミシュランの前哨戦としてトップレストラン50という世界の高級レストランをランキングするイベントが行われ、そこでグランメゾン東京が初選出で10位に選ばれる快挙を達成するシーンがあります。

 これは実際に存在する「世界のベストレストラン50」という海外の権威ある料理月刊誌のリストをもとに設定を変えたものだと思われます。

 こちらも世界中の600人のシェフ、レストラン経営者、批評家、フーディーが投票で選ぶという性質上、こちらもすべての上位のレストランを網羅できる仕組みではそもそもないのですが、それでもそのランキングはそれなりに権威をもっています。

 その世界のベストレストランの歴代一位のお店はほぼミシュランの三ツ星を獲得していますが、なぜかコペンハーゲンのノーマだけは過去4度世界のベスト1位に選出された一方でミシュランでは二つ星に位置づけられていることが不思議だと言われています。

 日本のレストランでも、2019年版のベスト50に入っているお店は11位の『傳』と22位の『Narisawa』の2軒です。

 どちらもグルメの立場からすると垂涎のレストランですが、ミシュランでは『傳』も『Narisawa』も評価は二つ星です。

 ベストレストランには「アジアのベストレストラン50」というランキングもあって、ここでは日本のレストランは12軒、うち東京からは10軒がランキング入りしています。2019年のベスト50には外苑前の『フロリレージュ』もアジア5位と上位に入っていますが、ここもミシュランでは二つ星。

 逆にアジアのベスト50で三ツ星はというとアジア9位の『龍吟』、45位の『カンテサンス』と、一般客の予約がとれないという理由でミシュランガイド2020から掲載対象外となった『鮨 さいとう』の3軒だけです。

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ミシュランのライバル「ゴ・エ・ミヨ」の実力
 この現象は野次馬的に言えばライバル誌が絶賛するお店はお互いに厳正に評価したがる傾向があるという現象に思えます。

 ちょうど文壇の賞レースと似ているかもしれません。山本周五郎賞を受賞し文春のこのミステリーがすごいの歴代ベスト・オブ・ベストの一位にランキングされている宮部みゆきの『火車』が、直木賞の選考委員にどれだけ酷評されているのかを読むと、このあたりの評論家という世界の空気がよくわかるというものです。

 でも本当のところは東京でどのレストランがおいしいのか、気になりますよね。

 以前は無料サービスだった食べログが比較的評価として頼りになったのですが、有料サービスを始めてからは点数があまりあてにならなくなったという実感があります。その意味で頼りになる第三勢力といえるのがフランスではミシュランと双璧をなすといわれる黄色いレストランガイドブックの『ゴ・エ・ミヨ』です。

 日本にはミシュランよりも遅れて2016年に上陸したのですがフランスではミシュランと同じくらい有名なガイドブックです。

 『ゴ・エ・ミヨ』の特徴はお店を20点満点で評価したうえで0.5点刻みの点数を公開していることです。

 評価の特徴としては料理の質を純粋に評価する方針を徹底しているといわれています。

「次に行きたいお店」が見つかる
 有名レストランについてミシュランのように「選ばれた/選ばれていない」という結果だけではなく相対的に比較可能な点数で評価されているので、その意味でも「次に行きたいお店」を検討する際にはとても参考になります。

 そして実は私から見てもこの『ゴ・エ・ミヨ』の点数が比較的私のお店に対する感想と近いと思っています。

 ちなみに『グランメゾン東京』を監修したカンテサンスはミシュラン三ツ星でアジアのトップ50にもランク入りし、ゴ・エ・ミヨでは19点と最高ランク。

 すくなくとも最高峰は誰が評価しても最高峰だということでしょう。

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