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新型コロナ「企業活動も止める」深刻すぎる影響

日本企業の物流・調達関係者は頭を抱えている(撮影:今井 康一) 日本企業の物流・調達関係者は頭を抱えている(撮影:今井 康一)

 中国・武漢を発生源とする新型コロナウイルス(COVID-19)の拡大が止まらない。メディアでは連日のようにダイヤモンド・プリンセス号における乗客たちの感染判明を伝え、また、日本全国で経路不明の感染者増を伝えている。

 当初は影響も軽微に見られていたためか、その反動として世界中の人々はいま恐怖に震えている。感染したら多くは重症にいたらないとはいうものの、2%程度とされる致死率は決して低いとはいえない。特効薬も存在しないため、人々は不要不急の用事を避けるようになった。不特定多数の参加者が集まるイベントは、自主的に延期・キャンセルされている。

■移動や集会が制限され、部材も入ってこない

 当然、それは産業界にも波及している。私はサプライチェーンのコンサルタントをしているため、多くの企業人と対面する。すでに、今週から「新幹線に乗られないことになりました。向かえません」と仕事のキャンセルが相次いでいる。近隣の方々に話を聞くと、海外の複数国から、「『日本人の出張者はできるだけ来ないでくれ』と言われている」と教えてくれる。

 移動だけではなく、中国からの部材も滞っている。今週、訪問した建設業者は、大手メーカーからの温水洗浄便座、食器乾燥機、換気扇が入荷しないことから、客先に頭を下げにいっていた。それらの部品の一部は中国製らしく、納期が未定としかいえないらしい。その他、建材も中国からは滞っている。

 昨今の企業活動は、人々の行き来と、世界的につながったサプライチェーンとを前提としているから、もうほとんど血流が止まったようなものだ。このところ、米中経済戦争といわれるが、中国には各国から無数の材料が運び込まれ、それを組み立て加工(アッセンブリー)して輸出していた。各国の出口戦略の場所として使われてきた。その出口が閉鎖されている以上、絶望的な状況になるしかない。

 有名企業の例を挙げよう。アップルは2月17日、2020年1~3月期の売り上げが従来予想を未達になる発表した。iPhoneの生産をはじめとし部品サプライヤーなども中国に集中しているためだ。生産はなんとか再開しているものの、物流が遅延しており出荷が遅れている。

 フォルクスワーゲンも中国にある工場の再稼働を延期した。トヨタとホンダは広州の工場を一部ながら再開したが、フル稼働にはいたっていない。中国からの部材が集まらない影響で日産自動車九州は稼働率を下げている。ヒュンダイ、マツダも同様に中国からの輸入がネックで生産に影響が出ている。

 東日本大震災の際、BCP(事業継続計画)が叫ばれた。自社工場が万が一、災害に見舞われた際の対応に加えて、調達先が災害に遭った際の対応策も練られていた。調達先の二重化や、在庫化や、代替生産の調達先を選定していた企業もある。しかし、実際には金型をすべての部材で二重に作製するコストをかけられるはずもなく、さらに多量の在庫を持つわけにもいかず、さらに中国全土がストップしてしまうとは、さすがに予測できなかった。金型を中国から他国に移管しようとしても、それを運ぶ人もいない。

 各社ともかなり手詰まり感と焦燥感に支配されている。

■回答者の88%が「影響あり」と回答

 なお、著者の属する企業では緊急で、各日本企業に、新型コロナウイルスのサプライチェーン・物流・調達影響についてアンケート調査を行った。約1万3000人のサプライチェーン・物流・調達関係者を対象に送付した。

 結果、10%程度から回答が寄せられたうち88%が、「新型コロナウイルスの影響がある」と回答した。正確には、70%が影響あり、18%が調査中との回答だったものの、調査中ながらほとんどの企業が「部材の遅延は生じている」と回答していたため、合算の88%を影響ありとカウントした。代表的な声は下のとおりとなる。

(1)一次、二次、中国取引先の生産停止
●一次中国サプライヤーの生産停止(作業者不足等)
●一次中国サプライヤー窓口不在により情報確認できず
●二次中国サプライヤーの生産停止(作業者不足等)
●二次中国サプライヤーの状況把握困難
●一次中国サプライヤーが商社の場合、業務停止に伴い、二次中国サプライヤーへ発注不可、二次への支払い遅延
●防塵マスク等の入手不足により再稼働できず
●中国の各省から工場再稼働認可がなされない

●最終出荷前の(日本企業による)同席検査できず停滞
●一次中国サプライヤーが工場停止のため、資金繰りが悪化し、工員不足、二次中国サプライヤーへ注文できず

(2)中国国内の物流問題
●道路閉鎖による物流遮断
●トラックドライバーの不足
●エアー便の集中による取り合い
●一次サプライヤーの有する金型を代替国(日本、ベトナム等)へ輸送できず
(3)間接的な影響
●取引先(日本あるいは他国)が中国から完成品や部材、原材料を仕入れており、供給停止

●中国にある二次サプライヤー以降の情報は、そもそも取引開始時に入手しておらず、現時点でも解明できず

■「手の打ちようがない」と答える担当者も

 対策は、絶対解答がないため、各社とも苦しんでいる様子がうかがえる。

●国内、あるいはベトナム等での代替生産
●国内既存保有在庫の使用
●国内にある中古部品の再利用
●代替品の検討
●中国国内での停滞の場合は、ハンドキャリーなどの応急処置
●ひたすら催促
●手の打ちようがない

●フォースマジョールの申請
 なお、「フォースマジョール」とは不可抗力条項と訳される。これは予想不可能な事象が起きたときに契約の履行を免れるもので、顧客に対して商品供給が難しい旨を伝えることを指す。

 現時点では新型コロナウイルスへの対処療法を探して、各企業は奔走している状態だ。教訓を引き出すにはまだ早い。それにいつ収束を迎えるのかわからない。ただ、いったん騒ぎが収まれば、今後の企業行動に大きな影響を与えるに違いない。

 大げさにいえば、これは今後、「中国を選択するかしないか」というグローバリズムかアンチグローバリズムの選択である。中国は生産地としてだけではなく、マーケットとしても有望であるのは間違いない。ただし、今回のような感染症がまた生じる可能性もある。同時に共産党一党独裁制度は、今回の初動のように大きな問題を残した。

 コストが上昇しようが日本国内へ生産を回帰させる可能性も検討しなければならない。グローバリズムが引き起こしたアンチグローバリズムという逆説。私たちは新型コロナウイルスへの対応とともに、次なる課題も突きつけられている。

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