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日本人はSNS加害者になる危険を知らなすぎる

SNSのデマや不確かな情報に振り回されないためには?(写真:C-geo/PIXTA)   SNSのデマや不確かな情報に振り回されないためには?(写真:C-geo/PIXTA)  

昨年、スマホ・SNSを入口とした犯罪が報道されることが増え、その怖さが話題となりました。
しかし、スマホ・SNSの怖さは、被害に遭うことだけではありません。あなたやあなたの家族が、無自覚のうちに加害者・犯罪者になってしまうケースも多いのです。
『あなたのスマホがとにかく危ない~元捜査一課が教える SNS、デジタル犯罪から身を守る方法~』の著者である佐々木成三氏に、気をつけるべき危険について聞きました。

■犯人誤認で袋たたき――損害賠償請求訴訟に発展

 SNSにはデマや不確かな情報があふれています。それを改めて思い知らされたのは、昨年夏に起きた常磐道あおり運転事件で拡散した「ガラケー女」のデマでした。

 この事件では、あおり運転を繰り返した揚げ句、相手の車を停車させてドライバーを殴った男が傷害容疑で逮捕。

 また、ドライブレコーダーの映像の中で、男がドライバーを殴る様子をガラケー(携帯電話)で撮影していた交際相手の女は、「ガラケー女」と呼ばれ、事件の発覚当初から、ある意味、男以上に注目される存在でした。

 すぐに、あおりカップルの正体を暴けと、執拗な犯人探しが始まり、「これがガラケー女だ」と実名がさらされ、凄まじい勢いでネット上に拡散していきました。

 ところが、ガラケー女とされたこの女性は、まったくの別人だったのです。

 デマの拡散に気づいた女性は、ただちにFacebookで「完全に事実と異なる」と否定しましたが、ネットでは、「顔の輪郭が同じ。××は絶対にクロ」「歯並びもネックレスも同じ」などとデマがさらに拡散を続けていきました。

 それがやっとやんだのは本物のガラケー女が男と一緒に逮捕され、実名が報道された後でした。その間、女性の会社には嫌がらせなどの電話が1日200件以上かかってきたそうです。

 デマの根拠は、女性のInstagramのアカウントを逮捕された男がフォローしていたことと、女性がSNSに投稿していた写真の容姿や服装(サングラスと帽子)がガラケー女と似ているという、それだけのことでした。

 その後、女性はデマをSNSなどに投稿した人たちの法的責任を追及すると発表。デマを流した100件単位の投稿や記事について発信者情報開示請求の手続きを進め、発信者を特定した場合は損害賠償請求などを検討しているようです。

 この件についての投稿をしたり、リツイートしたりした人は、最初は悪者を懲らしめるつもりだったのでしょう。しかし、その情報が真実かどうかもわからないのに、拡散するということは、他人の人生を狂わせることにもなりますし、拡散者が罪に問われるケースもあるのです。

■デマに加担してしまう人の共通点

 では、なぜ人はデマの拡散に加担してしまうのでしょうか。それを考えるとき、1つ参考になる事例があります。

 2016年4月に発生した熊本地震の直後に、街中を歩くライオンの写真とともに次のようなデマがTwitterに投稿されました。

 「おいふざけんな、地震のせいで
うちの近くの動物園からライオン放たれたんだが
熊本」

 このツイートは実に2万人以上にリツイートされ、大騒ぎになりました。その結果、熊本市の動物園には問い合わせが殺到。デマが業務を妨害したとして、神奈川県に住む当時20歳の会社員の男が逮捕されました(不起訴処分)。

 地震直後の熊本の人たちの心情を思えば、悪質なデマを流した男の逮捕は当然だったと思いますが、一方であのツイートは当初、「出来の悪いネタ」として一部のネット民の間では嘲笑されていたのです。

 彼らはまず、写真に写る信号機や路上にひかれたラインなどを見て、
「これ、ほんとに日本?」と疑い、さらに、

 「熊本市内をライオンが歩いていたら、もっと目撃情報があるはずでは?」「なぜこの写真しかあがってこないの?」「本当に逃げたなら、動物園や警察・行政から何も発表がないのはおかしい」等々、不自然なことが多すぎると直観的に疑い、「これ、フェイクだろ!」と最初から確信していたわけです。

 実際、この写真はのちに、南アフリカのヨハネスブルクで映画のために撮られたもので、ライオンの名前がコロンブスということまで明らかになりました。

 ところが、地震直後で熊本関連の情報が拡散されやすい状況であったことから、ネタのつもりだったツイートが拡散力を獲得し、SNSのリテラシーに通じていない人たちのところまで到達。

 「大変だ、みんなに知らせなきゃ!」と使命感にかられた人たちによって、一気に拡散されてしまいました。

 そこから見えてくるのは、次の2つの点です。

① ネットのウソを見抜くリテラシーの欠如
② 過剰な使命感や正義感の発動
 先の常磐道あおり運転事件も同様で、根拠のない情報を鵜呑みにした人たちが、「あの女、許せない」という過剰な正義感を発動させて、デマの拡散に加担した結果、別人の女性への攻撃につながってしまったわけです。

 炎上などからもわかるように、ネットでは怒りのベクトルが一斉に同じ方向に向きやすく、正義感が暴走しやすい。だからこそ、食いつきたくなる情報ほど、拡散する前に冷静に吟味することが大切なのです。

■SNSのフェイク情報を信じて逮捕

 そのほかにも、SNSに踊らされた結果の逮捕例は少なくありません。こんな事例があります。

 ある男がオービス(速度違反自動取り締まり装置)にかかり、制限時速40kmの道路を時速78kmで走行したとして速度超過で逮捕されました。

 しかし、通常はこのレベルの速度超過では、逮捕まではされません。ではなぜ逮捕されたかというと、ネットのデマを信じて警察からの出頭要請を拒み続けたからです。

 男はネットのデマ情報から、オービスの写真1枚では本人と断定できないので、警察への上申書に「運転していたのは自分ではない。車は第三者に貸していたが、その人の名前は明かせない」と書いて出頭を拒めば大丈夫、と信じてしまったのです。

 このデマを信じて逮捕された人は、1人や2人ではありません。素直に警察の出頭命令に応じていれば、逮捕までされることはなかったのです。

 こうしたネットのデマにだまされないようにするには、

① ネットの情報を鵜呑みにしない
② エビデンス(根拠)があるのかを必ず確認する
 この2つを習慣にすることです。

 本当かどうかは、例えばその情報に関係する組織や機関に問い合わせをすれば、すぐに確認がとれるはずです。

 SNS等のネット情報は、まず疑ってかかる癖をつけたほうがいいでしょう。

 デマの拡散以外でも、とくに若い世代に忍び寄っている魔の手があります。それが「闇バイト」です。

 振り込め詐欺などでは現金の受け取りなどをする「受け子」が必要になります。そこで反社会的勢力は、SNSを通じてその募集を行うのです。

 よくあるパターンとしては、Twitterで「これをリツイートしたら1万円あげます」とツイートをします。お金がほしい人は、言われたとおりリツイートします。

 すると本当に1万円をあげるのです。遊びたいけどお金がない大学生などは大喜びです。

 次に反社会的勢力は、リツイートした人たちに声をかけてパーティーをします。かわいい女の子も集めた、派手目のパーティーです。

 「ここのお金はいいよ」と言ってタダで飲み食いさせます。お金のない学生はすっかりいい気分になり、舞い上がってしまいます。

 そうやってお金に興味のある若者を集め、頃合いを見計らったところで、「いいバイトがあるよ、やらない?」と切り出します。

 その仕事は、大麻・覚醒剤の販売や、振り込め詐欺の受け子で、これに一度でも手を出せば、二度と抜けられなくなってしまうのです。

■スマホ技術の進歩とともに知識もアップデートすべき

 Twitter をのぞいてみると、闇バイトの募集告知があふれています。例えば――。

「ブラック案件。日当10~20万円 #闇バイト」
「大阪で運びあります。平均日当5~10万円 #闇バイト」
 闇バイトというのは、要するに特殊詐欺グループの仕事です。しかし実際には、自らその違法な仕事を求めていってしまう人も少なくないのが実情なのです。SNSのリテラシーの必要性を痛感します。

 以上のように、SNSになじみにある人は、自らが加害者になる投稿をしていないかどうか、またSNSになじみのない人でも、自分の家族がそうした犯罪の片棒を担ぐ投稿をしていないか、意識を高くして注意する必要があります。

 安全と危険の境界線を理解し、家族を正しく導くためにも、スマホ技術の進歩に合わせて、自分の理解のアップデートも怠ってはいけません。

 スマホに潜む危険というのは、SNSの問題だけでなく、セキュリティーロックの設定、不適切動画やデジタルタトゥーの問題、巧みに誘導される詐欺サイト、個人情報を狙う危険なフリーWi-Fi、子どものスマホ管理の問題等々、多岐にわたります。

 ぜひみなさんも自分と家族のスマホの使い方をチェックしてみてください。

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