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マンション融資不正、販売会社「アルヒの担当に指示された」《楽待新聞》

(写真:不動産投資の楽待) (写真:不動産投資の楽待)

固定金利住宅ローン「フラット35」販売首位のアルヒ(ARUHI、東京都)が手掛ける投資用マンションの融資で、源泉徴収票など審査資料の改ざんが行われていた疑いが浮上した。

審査資料を改ざんされたオーナー側の代理人を務める加藤博太郎弁護士によると、オーナーの多くは年収300万円前後の若年層で、販売会社が年収を水増しすることでローンを通りやすくしていたとみられる。オーナーの一部はサブリース賃料の減額や契約解除によって毎月数万円の持ち出しが発生しており、これまでに加藤弁護士が相談を受けた20人弱のうち、返済が立ち行かなくなった数人はすでに自己破産の申し立てを決めたという。

実勢価格の2倍にも上る価格で物件を購入しているオーナーも多く、サブリースの保証賃料が実賃料を大きく上回るといった問題もあり、加藤弁護士は「かぼちゃの馬車に似た詐欺的なスキームで被害者はかなり多く、自己破産に追い込まれるケースも増えていくと考えられる」と指摘。一部の販売会社は「アルヒから改ざんの指示を受けた」とも証言しており、問題の全容解明が待たれる。

■「絶対損はさせない」

「知人に紹介された男性から投資用マンションの話を聞きました。最初は貯金より全然金額が大きい話なので断っていたんですが、『絶対損はさせない』と押し切られて……」

大阪府の会社員Aさん(20代男性)は2017年9月、紹介で出会った男性から投資用マンションを勧められた。神奈川県内の中古1Kマンションで、価格は約1600万円。アルヒ経由で新生銀行グループの信販会社アプラスから融資を受ける内容で、投資用マンションローンが約1200万円で金利2.65%25年、いわゆる諸費用ローンが400万円で金利5.8%15年という条件だった。

空室でも賃料が保証されるサブリース契約で、保証賃料が6万8200円、月の返済と管理費が10万円弱という計画。当初から毎月3万円近い持ち出しが発生する試算だが、「5年後ぐらいには同じぐらいの金額で売却でき、税金の還付などがあるのでトータル200万円ぐらいのプラスになる、というような説明でした」

しばらくは持ち出しを続けながら所有していたが、購入から2年弱が経過した昨年5月、サブリース会社から1通の手紙が届いた。

<現状家賃を継続するのは困難なため、近隣相場などを踏まえて賃料を3万7800円に減額させていただきます>

「『どういうことですか?』と男性に連絡を取ると、『サブリース会社が経営悪化で倒産しそうで、今その会社と裁判をしている』と説明されました」。さらにその2カ月後、一方的に「サブリース契約を解除します」という通知が届いたという。

その後、不審に思ったAさんが物件について調べると、このマンションの実際の取引価格は700万円程度にすぎないことが分かった。つまり、実勢価格の倍以上の値段で売りつけられたということになる。

「加藤弁護士に相談したところ、『審査資料が改ざんされているかもしれない』と言われたので、アプラスに連絡して資料を取り寄せたんです。そうしたら、提出した源泉徴収票は年収が345万円だったのに、437万円に水増しされていた。書式も違うし、会社印も押されていなくて本当に驚きました」

現在は賃料が減額されたことで、月の持ち出しは6万円ほどに膨らんでいる。打ち切られた家賃保証はその後、別のサブリース会社が引き継いでいるが、入居者は12月に退去し、同じようにサブリース契約が外れれば10万円弱の返済だけがのしかかることになる。

「毎月の給料は手取り16万円ほどで、家賃や光熱費、携帯代などで8万円ぐらいなので、持ち出しが10万円弱となると生活ができない。もう貯金も尽きてしまい、このままでは立ち行きません。自分がもう少し調べておけばと思う気持ちもありますが、金融機関がちゃんと審査して不正を見抜いていればこの話は終わっていた。個人的には、ずさんな審査で詐欺的スキームに加担しているようなものだと感じています」

■「不正がなければ買えない層」

加藤弁護士のもとには昨年12月ごろからこれまでに20人弱のオーナーが相談に来たが、多くが年収300万円前後の「不正がなければ投資用不動産を買えない層」(加藤弁護士)。実勢価格600万~800万円程度のマンションを1800万~2000万円程度で購入する事例が多いという。

加藤弁護士の調査によると、多くのオーナーが源泉徴収票や課税証明書を改ざんされ、年収はアプラスの投資マンションローンの融資基準とされる400万円以上に水増しされていたとみられる。改ざん後の年収の金額については、返済比率から逆算して調整していたという情報もある。また、無職のオーナーにもかかわらず、申込書の勤務先の欄に本件のサブリース業者の名前が記されるなど、勤務先を捏造していたケースも見つかった。

■2社のサブリース業者

改ざん以前に、Aさんの契約にはいくつか問題点がある。まず、そもそも初年度から物件単体の収支が赤字で、投資として成り立っていない。購入価格が実勢価格の2倍にも上るため投資家にとっては出口がなく、保証賃料が相場より約3万円も高く設定されている。物件価格を水増ししている分、見た目の利回りをまともにするために非現実的な逆ザヤの保証家賃でサブリース契約を結んでおり、もともと成立し得ない投資だったことが分かる。

販売会社の下に何人かのブローカーが存在し、低所得層に狭小の投資用マンションを紹介。オーナーはアルヒの仲介でアプラスから融資を受ける。オーナーとサブリース賃貸借契約を結ぶ「表サブリース業者」と入居者の間に「裏サブリース業者」が存在し、サブリース業者と裏サブリース業者もサブリース賃貸借契約を締結。実際の管理業務はオーナーと接点のない裏サブリース業者が行う。

裏サブリース業者は入居者から実賃料を受け取り、10%程度の金額を抜いて表サブリース業者に流していたとみられる。Aさんの事例でいえば、約3万4000円ほどが裏サブリース業者から表サブリース業者に渡り、表サブリース業者は倍額の6万8000円をオーナーに保証していた形になる。

つまり、もともと表サブリース業者が収支を成り立たせることが不可能なスキームだった。加藤弁護士の調査によると、表サブリース業者は契約段階で販売会社から保証賃料と実賃料の差額の2年分を先に受け取っていたとみられる。Aさんのケースであれば、保証賃料と実賃料の差額である3万円の2年分、72万円ほどというイメージだ。

加藤弁護士は「要するに表サブリース業者は2年だけ保証賃料を払うための空箱装置で、もともと2年で飛ばす計画だったと考えられる。オーナーと入居者の間に2社のサブリース業者が入ることで、オーナーから実賃料が把握しにくくなり、保証賃料との逆ザヤ状態に気付かれにくいというメリットがある」と指摘する。

■破綻前提のスキーム

このスキームで表サブリース業者として40件ほどのサブリース契約をオーナーと結んだ不動産会社の社員は「販売会社からは、2年間でサブリースを打ち切ることを前提に2年分の上乗せ賃料だけを先に渡されていた。保証賃料が実賃料を大きく上回る逆ザヤ状態で、最初から2年後に破綻させることが仕組まれていたと考えている」と話した。

社員は「すべて販売会社に指示され、途中でスキームから抜けようとしたときは『逃げるのか』と言われた。裏サブリース業者とオーナーの間にもう1社挟むのは、何か問題が起こった時に汚れ役にしようとしていたのではないか」とみる。

加藤弁護士は「このスキームに絡む業者の中には、かぼちゃの馬車を大量に販売していた会社や、スルガ銀行のデート商法問題に関与した会社もある。スルガ銀行の不正融資で稼げなくなった複数の業者がブローカーなどと組み、アルヒ・アプラスのローンを利用した低所得者へのワンルーム販売スキームに流れたという構図が見え隠れする」と指摘する。

■ブローカーに騙され、離婚してうつ病に……

「今考えれば、あの男がブローカーだったのか……と。見抜けなかったことが悔しいです」

九州地方在住の会社員Bさん(30代男性)は2018年1月、都内の区分マンションを約1500万円で購入。アルヒの仲介でアプラスから融資を受け、本体ローンは約1200万円で金利2.7%25年、諸費用ローンは約300万円で金利5.8%15年という契約だった。

「もともと、知人から不動産投資の話を聞いて、『詳しい話ができる人がいる』と、ある男を紹介されました。その男と何回か1対1で会って、最初は乗り気ではなかったんですが、『家賃保証がついていて保険代わりになる』と強く勧められているうち、購入を決めたんです」

月の返済額は8万2000円で、サブリースの保証賃料は6万8500円。「当初から月の収支はマイナスだと聞いていましたが、税金の還付があって、5年後には200万、300万上乗せした金額で売れるから、と。すでに買いたい企業が数社いるので売れないことはないから安心だ、という説明でした」

購入時、この男から「諸経費にあててください」と50万円が振り込まれた。「もともとはこの50万円に加えて毎年、税金の還付が30万円あると説明されていて、『支払いと受け取りがトントン』と言われていました」

ただ、実際は税金の還付が17万円しかなかった。「その男に『大丈夫なんですか』と確認すると、『こういう試算になります』と新しいシミュレーションを送ってきたんです」。このシミュレーションでは、5年目の累計CFがマイナス54万円という試算になっていた。

そして購入から1年8カ月後、突然、サブリース業者から「サブリース契約を解除させていただきたい」という通知書が届いた。現在は家賃が4万3000円まで下がり、月の持ち出しは4万円ほどまで膨らんでいる。

Bさんは審査資料の改ざんをされたかどうか不明で、現在資料の開示請求をしている段階。売却査定は600万円程度で、手放したとしても残債が重くのしかかる。「実はこの投資が問題で去年離婚してしまって、不安で夜も眠れなくなり、うつ病を発症して今も精神病院に通っています。毎月4万円の持ち出しに加えて、住宅ローンの支払いが月10万円以上、養育費の支払いもある。自己破産しなければいけないか……と思っています」

ブローカーとみられる男については「正直、この人にさえ会わなければ……という思いもあるんですが、何もわからず無知だったので信用してしまった。人を騙すような悪い人には見えなかったですが、全て分かってやっていたことだと思うので怒りがあります」と悔しさをにじませる。「金融機関の審査を通った時点で、ちゃんとした物件だと信頼してしまったのもいけなかった。あの時、『買ってはいけない物件』だと否決してくれていたら……」

■不正への関与は

アルヒは国内最大手の住宅ローン専門金融機関で、住宅金融支援機構が提供する長期固定の住宅ローン「フラット35」の販売首位。フラット35をめぐっては、居住目的にもかかわらず収益物件に転用する、いわゆる「なんちゃって」と呼ばれる手法が問題視され、昨年5月には融資審査を厳格化したと発表していた。

加藤弁護士によると、今回の不正は神奈川県にあるアルヒのフランチャイズ2店舗に集中していたとみられる。ポイントは、アルヒ・アプラスがこの改ざんを認識していたか、認識していたのであれば積極的に指示・関与していた事実があったかどうかという点だ。

アルヒは1月28日、ホームページ上で「フランチャイズ店舗が主体となり不正を行った、あるいは審査書類が改ざんされたという事実は現段階で確認されていない」とのコメントを発表した。

しかし、ある販売会社の元社員は加藤弁護士の聞き取りに対して「これまでアルヒ・アプラス投資用ローンで150件ほどワンルームマンションを販売したが、半分ほどで年収の改ざんがあったと認識している」とし、「アルヒの神奈川県内の支店の担当者から具体的な改ざんの指示を受けた」と証言した。

加藤弁護士によると、元社員は「実賃料でアルヒに持ち込むと、その担当者から『この賃料では融資が下りない』として賃料の水増しを指示された。また、入居中であっても『空室』という記載で再提出するよう言われた。実際に入居しているとその賃料を記載しなければならず、見込み賃料を水増しできなくなるためだと思われる。カードローンやオートローンなど別の借り入れについても『書かないでくれ』と言われた」と証言したという。

■アルヒ「不正のメリットはない」

楽待新聞編集部は、アルヒに不正行為の認識について質問した。

アルヒは「フラット35の融資申し込みについては、弊社主体で審査したうえで住宅金融支援機構の本格的な審査に回すが、アプラスの投資用マンションローンの場合はあくまでも取り次ぎ。フランチャイズ店舗に必要資料がそろった段階でアプラスに送り、資料の内容が正しいか、物件価格が妥当か、などの確認はアプラスが行う」と説明。「現在、アプラスと連携して内部でのヒアリングはスタートしているが、客観的な不正の証拠は見つかっていない」とした。

1案件数万円程度の手数料のために、担当者が不正のリスクを犯すのかという疑問はある。アルヒは「仮にフランチャイズ店舗が改ざんを主導して多額の被害が出た場合、契約の解除や損害賠償に発展する可能性もある。投資用ローンは弊社のビジネスのメインではなく、本部としてフランチャイズ店舗にノルマも課しておらず、店舗や担当者個人が目先の成績のために不正に手を染めるメリットは考えにくい」とした。

今回、業者に不正を指示した人物として名前の挙がっている担当者については「本人には複数回ヒアリングしているが、不正の事実は確認できていない。今後も調査を続けるが、仮に不正が明らかになった場合、本部に責任があるかどうかも含めて検討する。まずは現場で何があったのか、ビジネスモデルに問題がなかったのか、早急に解明するのが先決だと思っている」との見方を示した。

■アプラス「物件評価の妥当性調査」

一方、アプラスは楽待新聞編集部の質問に対し、「複数のオーナーから『審査資料が改ざんされていたかもしれない』という問い合わせがあり、提出された源泉徴収票や課税証明書の開示請求には応じているが、実際に改ざんがあったかの確認は取れていない」と回答した。

審査体制については「以前は源泉徴収票のコピーでも審査していたが、2018年9月以降は原本チェックを義務付けている。信用情報などと照らし合わせて審査しているが、我々だけでは気づけないケースもある」と説明。勤務先の在籍確認については「全件調査ではなくケースバイケース。年齢に対して明らかに年収が高いなど、不自然な部分がなければ通常の審査に回す」という。

物件評価については「融資審査時に第三者評価機関の評価をとって判断しているが、基本的にその評価から乖離するような融資はしていない」という回答。「投資用マンションローン(本体ローン)については物件評価額が上限で、融資希望額に満たない場合に提携型サポートクレジットのローン(諸費用ローン)を紹介している。投資用マンションローン単体で物件評価を上回る融資を出すことは基本的にない」とした。



加藤弁護士が相談を受けた中には、サブリース契約の解除で賃料がストップしているオーナーも存在し、毎月の持ち出しが10万円近くとなれば年収300万円前後で持ちこたえられる金額ではない。加藤弁護士によると、「自己破産するしかない」というオーナーも複数いるという。

もちろん、事前に契約内容を精査せず、リスクの把握を怠って1000万円以上の投資を決めた投資家側にも落ち度がある。

加藤弁護士は「今回は高属性の投資家が狙われたかぼちゃの馬車と違い、サブリースの仕組みすら理解していない若年層がターゲットになった」と指摘。「源泉徴収票や課税証明書の改ざんは私文書偽造・公文書偽造にあたる。今後はアルヒ・アプラスの関与について調査し、集団訴訟の道も模索する」としている。

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