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【新興国経済】米中合意を受け、民需回復と貿易黒字縮小が交錯する中国経済

岡三証券 チーフエコノミスト(中国) 後藤 好美 岡三証券 チーフエコノミスト(中国) 後藤 好美

〔図表〕中国の実質GDP成長率(内外需寄与度)の推移 〔図表〕中国の実質GDP成長率(内外需寄与度)の推移

 1年半にわたり関税引上げ合戦を繰り広げてきた米中両国が2020年1月15日に、ようやく「第1段階の合意」に達した。その2日後に中国政府は、19年の実質GDP成長率は6.1%と前年から0.5ポイント減速したと発表した。昨年は米中対立の激化に伴う国内マインドの冷え込みが内需を大きく下押ししたかたちだ。
 米中の休戦合意で幕が上がった20年は、①元高・株高の進行や②民需の回復といったポジティブな変化が生じている。マーケットでは、為替政策が合意事項に盛り込まれたことで、為替市場の元高圧力が強まっている。そもそも元高実績を示さない限り、トランプ米大統領が合意不履行とみなしかねないほか、輸入拡大を強いられる中国にとっても自国通貨高が有利に働くため、今後為替市場は元高トレンドとなる可能性が高い。また、こうした元高に伴う外資流入の加速や米中対立リスクの軽減が追い風となり、株式市場もマイルドな上昇基調が続くことが見込まれている。
 実体経済でも、米中合意の着地が見え始めた昨年末ごろから企業マインドが上向き始め、生産受注の回復が顕著になっている。今後数年は5G関連需要の盛り上がりも期待されており、昨年企業マインドの悪化で大きく落ち込んだ設備投資が改善に向かう可能性も出てきた。
 その一方で、米中合意によるネガティブインパクトも懸念されている。今回の米中合意の目玉は、米国製品・サービスの対中輸出の大幅拡大である。中国には今後2年間で2,000億ドル規模(1年目767億ドル、2年目1,233億ドル)の輸入拡大が義務付けられた。昨年は、景気悪化で輸入にブレーキがかかったため、中国の貿易黒字は拡大に転じて景気を下支えした。しかし、今年は対米輸入の急拡大で貿易黒字が縮小に向かう可能性が高い。
 以上のように、20年の中国経済は米中合意に伴う正負両面の影響が交錯し合う微妙な展開となりそうだ。しかし、総じてみれば、今年はマクロ政策が前年並みで維持されるなか、民需の回復が牽引役となり、景気は着実に安定化していくことが予想される。通年のGDP成長率も5.9%前後の横ばい圏内で推移することが見込まれる。
 この先、米中両国は合意の履行状況や第2段階協議を巡って意見の対立が表面化する局面もあるだろう。しかし、今年は、①大統領選挙を控える米国は、輸出拡大を実現して米中協議の成果を最大限誇示することが最優先事項となり、②5カ年計画の最終年を迎える中国も、景気安定維持が極めて重要な1年と位置付けられるため、双方とも関係維持に重きを置き、極端な対立は回避されるだろう。

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