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VW「T-Cross」はC-HRやヴェゼルに勝てるか

「T-Cross」は2019年11月27日に国内発売が開始された(写真:フォルクスワーゲン) 「T-Cross」は2019年11月27日に国内発売が開始された(写真:フォルクスワーゲン)

 フォルクスワーゲン(以下:VW)から、まったく新しい車種が発売となった。「T-Cross (ティークロス)」である。

 昨今、SUVの人気が高まり、まだ成長を続けている。そのなかで、とくに売れ行きを伸ばしているのが、5ナンバー車に近い車体寸法のコンパクトSUVだ。最近の例では、スウェーデンのボルボが発売した「XC40」は、納車待ちの状況がいまも続く。

 T-Crossは、現在のVWのラインナップで最も小さなSUVである。駆動方式はFF(前輪駆動)のみで、4輪駆動の設定は欧州にもない。車体寸法は、車幅が1.7mを超えるので3ナンバー車となるが、全長は4.1m強で現行「ポロ」より若干長い程度だ。全体的にポロとほぼ同等の大きさである。

 エンジンは、排気量999ccの直列3気筒ガソリンターボで、これに7速DSGという乾式ツインクラッチを使った自動変速機が組み合わされる。

 すでに2019年の初めに欧州では発売されており、日本へは同年11月からの発売となった。欧州市場の主力は、南欧地域であるようだ。

■導入記念の特別仕様「1st Plus」に試乗

 日本では、導入を記念した特別仕様の「1st」「1st Plus」 という装備を充実したモデルから販売が始まるが、限定車ではなく、半年ほどは売られるようだ。その上級車種である1st Plusに試乗することができた。

 1st Plusの目玉は、「デザインパッケージ」が採用されることにある。これは、ドアミラー/アルミホイール/ダッシュボードのカラーをコーディネートし、セットにしたもので、3種のなかから選ぶことができる。

 これによって外観はもちろん、クルマに乗り込んでもハッとさせられる鮮やかな彩に心を躍らされ、T-Crossでどこかへ出かけたい気分にさせられる。

 T-Crossは、質実剛健で実直なVWらしい実用性の高さも備えている。

 例えば後席は、前後14cmのスライド調整ができ、もっとも前へ移動すれば、荷室容積を約1.2倍に増やすことができる。この状態だと足元のゆとりはなくなるが、それでもきちっと座っていられる空間は確保される。ただし、シート自体は、少し座面の長さが不足していると感じた。

 また後席は、6:4の比率で背もたれを前方へ倒すことができ、それによって乗車人数や荷物の量に合わせたシートアレンジが可能だ。荷室の床を持ち上げると、スペアタイヤがない分(タイヤ応急修理キットで対応)小物入れとして使うこともできる。小柄な車体ではあるが、合理的な設計で実用性はかなり高い。

 運転席のシートはたっぷりとした大きさで、ドイツ車らしい硬めのクッションとともに、体をしっかり支えてくれる。逆に小柄な人には、シートがやや大きすぎるかもしれない。

■1.0リッターターボの走りの評価

 走り出すと、排気量が1.0リッター以下の小さなエンジンにもかかわらず、ターボチャージャーの過給によって力を補い、1270kgの車両を十分に加速させた。ただ、エンジン回転数が毎分2000回転付近では、力の出方がやや足りない場面もあった。

 気になったのは硬い乗り心地で、運転席ではもちろんのこと、後席ではとくに体が弾むほどで、快適とは言えなかった。1st Plusでは扁平率が45%という薄いタイヤが装着されており、路面からの衝撃を吸収しきれないのかもしれない。

 彩り豊かなアルミホイールとともに見栄えはよいが、やや扁平すぎる選択だと思われる。今回は試乗できていないもう1台の特別仕様である1stは、60%扁平のタイヤが選ばれているため、乗り心地はだいぶ違うはずだ。

 全体的には、最小回転半径が5.1mとコンパクトカーとしては十分な小回り性能も備え、都会での日常的な使い勝手もよいSUVではないかと思う。

 ドイツ車は、導入初年度は多少気になる点が残ることがあり、翌年以降になると様変わりするほど改善される場合が多い。1stや1st Plusという特別仕様としての装備の充実などに魅力はあるが、全体的な調和がとれるのを待つのも1つの考え方だろう。

 T-Crossは今後、どう販売を伸ばしていくだろうか。すでに、1stと1st Plusで約600台の受注を得ているという。納車は、2020年の1月以降に予定されており、実車を見ずに購入を決めた人がそれだけいることになる。その意味では、VWに対する日本人の信頼の高さをうかがわせる。

 2015年にアメリカで排ガス問題が起きたあと、一時的に販売台数が減ったのは事実だが、創業時の「タイプ1(通称:ビートル)」や、その後継となる「ゴルフ」に対する信頼には厚いものがある。それがVWというブランドを確固たるものとしている。

 また、そもそもコンパクトSUVへの注目自体が高まっているのは、冒頭のボルボ XC40の例でも明らかだ。XC40は、2018年の発売以来2年間で7800台強を販売している。

■「C‐HR」や「ヴェゼル」もライバル

 VGJ(フォルクスワーゲン グループ ジャパン)によれば、2009年から2018年までの間に、SUVの市場占有率は7%から21%に増えているという。街でよくSUVを見かける背景に、数字の裏付けもあるのだ。

 そのうちコンパクトSUVに関しては、SUVのなかで36%(2018年)に達し、この比率はスモールSUVやミッドサイズSUVの比率を上回る。まさに、成長するSUV市場のなかで最も勢いのあるクラスにT-Crossは当てはまるのである。

 競合は、ジープ「レネゲード」、フィアット「500X」、プジョー「2008」など多彩であり、そこにXC40も加わるだろう。さらに国産車では、トヨタ「C‐HR」、ホンダ「ヴェゼル」などが挙げられている。いわば激戦区だ。

 VWは、過去に「クロスポロ」という、「ポロ」をベースとしたSUV風の車種を2006年から販売し、国内で約8500台を販売している。本格的4輪駆動車やSUVではないが、活動的な雰囲気を味わいたい消費者が少なからずいることを明らかにした。

 クロスポロはほかの自動車メーカーにも影響を及ぼし、スバル「XV」や、トヨタ「アクアCrossover」のような車種も誕生した。現行のポロにクロスポロはなく、T-CrossはXC40の好調さを見るまでもなく、コンパクトSUVとして注目の1台となるのではないか。

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