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バリキャリ女子が考える「女の賞味期限」の意味

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(文 川村 真木子) 現在外資系投資会社に勤務する川村真木子さんは、UCバークレー卒業後、長く外資系投資銀行でマネージングディレクターとして活躍してきた「バリキャリ金融女子」。現在高校生のお嬢さんがいるワーキングマザーでもある。

 金融から政治、スポーツに生活まで本音を鋭く語る「長文社会派インスタ」が人気の川村さんが先日ディナーの場で聞いた「ある言葉」とは――。

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「バリバリ働いて婚期を逃すと困るのよね」
 先日、のびのびになっていた知り合いのお嬢さんの就職祝いディナーがあった。お嬢さんはこの春トップクラスの私立大学を卒業予定で大手企業の一般職の内定を持っているそう。そのお嬢さんの母親いわく「女には賞味期限があるから、バリバリ働いて婚期を逃されても困るのよね」。とにかく大手企業の一般職という内定を一番喜んでいるのはお母さま……私にはそう見えた。

 「女の賞味期限」って言葉は私の中で間違いなく大嫌いな言葉ランキングのトップ5に入る。誰が言い出したのか知らないけど、賞味期限って何? 失礼にも程がある。某婚活アドバイザーによると、昔は25歳まで、今はそれでも28~30歳ぐらいだそうなので大して長くなってない。日本人の寿命はどんどん長くなってるのに。要するに22歳で社会に出て最長で8年間で、女は人生の岐路を決め結婚しないと「賞味期限切れ」のゲームオーバーってロジックらしい。

 そもそも「女の賞味期限」ってとんでもなく失礼な言い回しだし、それを言われて嫌な気持ちにならない女子は殆どいないと思う。「男の賞味期限」なんて言葉聞いたことないしね。その点を一つ取っただけでも、この世界は如何に男女不平等か分かる。

 なのに、時々「うーん、私は女性差別など一度もされたことないです」とか「 男女差別を受けるのは、受ける人にも問題アリだと思う。可愛げがなかったり、自己主張が強かったり」って言ってくる女性がいてイラっとする。こういう人に今度遭遇したら「女の賞味期限問題」をぶつけてみよう。

厚生労働省の人口動態統計平成27年度の日本女性の平均初婚年齢は29歳だけれど Photo by iStock 厚生労働省の人口動態統計平成27年度の日本女性の平均初婚年齢は29歳だけれど Photo by iStock

年齢と共に自分を追い詰めることに
 いや、実際問題、彼女たちはどう思うんだろう。もしかしたら「女に賞味期限はあって当たり前」と思ってるのかもしれない。とにかく賞味期限が切れてゲームオーバーにならないよう対策を練ってるのかもしれない。「賞味期限が切れてゲームオーバーになる」、つまり「30歳までに結婚しない」を避けるために。

 ハタチ早々に婚活を始め、婚活ウケしそうな職業を選んでゲームに挑む。それは、賞味期限を自ら死守し、何とか高値で売り抜こうと切磋琢磨することを意味する。しかし「賞味期限」を前提としたゲームに乗っかると、年齢とともに勝てる確率は目減りしていき、たまたま自分が結婚したい人に出会わなかっただけでも、時間の経過とともにゲーム攻略がとんでもなく難しくなるという落とし穴が待っている。

 幸せの形を社会から押し付けられ「賞味期限」に代表されるように「消費される性」に甘んじるほど、人の人生は短くもないし、個人の性格や性質も同一ではない。ある女性は学問や研究に打ち込んで人類の未来を変えるかもしれないし、そんなに壮大でなくても、家事よりも外で働くほうが向いてるという人もきっと沢山いる。

 働いて経済的自立が可能になったら「女の賞味期限」なんて関係なくなる。好きな人と好きな時期に結婚できるようになるし、結婚が上手く行かなくなったら離婚を選択する贅沢もある。お金のために結婚生活を維持しなければならないのは、消費される時期はとっくに過ぎてるのに、社会で闘う武器を持ってないからだ。

Facebookにはこういうページがあり、ブルームバーグの記事も紹介。しかし2014年以降記事は投稿されていない Facebookにはこういうページがあり、ブルームバーグの記事も紹介。しかし2014年以降記事は投稿されていない

賞味期限の言葉の裏にある「出産適齢期」
一方で「賞味期限」の定義の裏には「出産適齢期」という、どんなに武器を持っていても乗り越えられない生物としての壁はある。いや、あるどころじゃなくそびえ立っている。2014年にfacebook社とアップル社が卵子凍結補助金を出すことを決定し(注1)、物議を醸し出した。ブルームバーグ誌の記事「Later, Baby: Will Freezing Your Eggs Free Your Career? (晩年の子:キャリアの足かせにならないように卵子凍結する? )」は世界中で話題となり、Facebook社は「Freeze your eggs, and Free your career ( 卵子凍結しておこう、キャリアの足かせにならないために)」とのキャッチフレーズでロイターなどのメディアでも大きく取り上げられた。

 まず、卵子凍結からの妊娠成功率は、決して高くない(注2)のに、これを「万能薬」かのようにブチ上げちゃったfacebook社とアップル社。意気込みは有り難いんだけど、残念ながらかなりオトコ目線、もしくは勉強不足感が否めなくて意気込み対比の残念度が高すぎる。凍結するなら女性だけの卵子じゃなくて、パートナーの精子と組み合わせた「受精卵」です(そして受精卵でも妊娠成功率は決して高くない)。それを「卵子凍結にお金出します、さぁ仕事しよーぜ!」って言う妙な明るさがちょっと寒すぎて凍えました。

 しかし、こんな話が話題になるぐらい「女性の賞味期限」の裏に潜む「不妊リスク」はみんなの心をザワザワさせる。冒頭の大手一般職に娘を就職させた母親も、最終的にはここを気にしてるのでしょう。

それこそ多様なすべての人が、個人の能力を発揮できる環境にするくらいの覚悟で行かないと、間違いなく「働き手」は減る。日本は特に目に見えて減少している。だからこそ「賞味期限」なんて言葉で考えなくてもいい環境にする必要があるのだ Photo by iStock それこそ多様なすべての人が、個人の能力を発揮できる環境にするくらいの覚悟で行かないと、間違いなく「働き手」は減る。日本は特に目に見えて減少している。だからこそ「賞味期限」なんて言葉で考えなくてもいい環境にする必要があるのだ Photo by iStock

卵子凍結よりも大切なこと
 個人的には、この「そびえ立つ生き物としての壁」を克服するのは「一般職選択」でも「卵子凍結」でもなく、女性本人はもちろんのこと社会全体の「意識改革」だと思う。妊娠適齢期・子育て期には後ろ指を指されることなくしっかり休めて、子どもを産めるオプションを提供する。そして妊娠しても、子供を産んでもキャリアを中断しなくて良い制度をガッツリ浸透させる。バリバリ働いている女性が躊躇なく結婚と出産を選ぶことができる体制があれば、「バリバリ働いていると婚期を逃す」なんてことにもならないはずだ。

 時短だろうがフレックスを実践していようが、出世コースから死んでも外さない。もしオジサンが嫌味を言ったらそのオジサンを出世コースから外すーー。そのぐらいやらないと政府がブチ上げた「一億総活躍時代」なんて、いつまで経っても到来しないし、能力ある若い女子が「女の賞味期限」みたいなとんでもない呪いに手足を縛られ、多様な生き方を選択する自由を奪われる。

 ちなみに、もう分かってると思いますが「一億総活躍時代」が来ないと困るのは女性だけではなく日本人全員です。働き手不足、将来の年金システムを支える人口が増えないのですから、しょうがないよね。そしたらそれを解決してくれる人口の半分の「女性」を「賞味期限」なんて言って「消費」してる場合じゃないことは明らかだ。

 こういうこと言ってると「バリキャリババアうぜー」って言われるんだけど、私は気にしない。言い続けます。

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(注1)Facebookは卵子凍結のために最大2万ドルの特典を全女性従業員に提供しており、Appleも2015年1月から、費用負担を開始。
(TechCrunch Japan 2014/10/15)

(注2)凍結保存しておいた卵子でヒトが妊娠する確率は極めて低く、更に正常な妊娠ができる保証はどこにもない。(Nikkei Style 2016/2/5黒田インターナショナルメディカルリプロダクション)
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