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中古品市場の拡大を経済成長につなげるには(リフォーム産業新聞社「リサイクル通信」)

日本総合研究所 調査部 マクロ経済研究センター 主任研究員 小方 尚子 日本総合研究所 調査部 マクロ経済研究センター 主任研究員 小方 尚子

〔図表〕個人間の中古品取引市場の規模(住宅と車を除く)の推移 〔図表〕個人間の中古品取引市場の規模(住宅と車を除く)の推移

 中古品取引市場の拡大が続いている。『リサイクル通信』の推計によると、車と住宅を除く中古品市場の規模は、2019年に2.35兆円に達する見込みである(図表)。5年で1.5倍の拡大は、さまざまな市場の規模縮小が見られるわが国において注目される動きである。
 こうした中古品市場の拡大は、スマホの普及とフリマアプリなどの取引ツールの登場により、手軽でコストを抑えた売買が可能となったことが牽引している。以前は捨てられたり死蔵されたりしていた単価の低いものやニッチなものにも買手が容易にたどり着けるようになり、取引が広がっている。
 また、消費者の嗜好の変化も市場拡大に寄与している。一つの製品をずっと所有するより、複数の物を必要に応じて利用したいというニーズの高まりである。SNS上の写真に、つど違う洋服で登場するために、中古品市場で洋服の売買を繰り返すのは典型例だ。
 今後を展望しても、中古品市場は拡大する見込みである。経済産業省の試算によれば、家計部門では年間7.6兆円の不要品が発生しており、潜在的な市場規模は現状の3倍以上に上る。中古品取引では、売手が副収入を得るだけでなく、買手には割安で新品市場にない選択肢が増え、社会全体としても資源の有効活用になるなど多くのメリットがある。
 もっとも、中古品売買の増加で新品の製造・販売が減るのであれば、GDPは減少する。中古品の売買の場合は、持ち主が入れ替わるにすぎないためだ。GDPに計上されるのは、売買の仲介手数料や宅配料などに限られ、新品の取引に比べると、生み出される付加価値は格段に少ない。
 実際、近年では、可処分所得のうち消費に回す割合である平均消費性向が低下傾向にある。これは、中古品売買に積極的な若年層で特に顕著であり、中古品売買による節約分が新たな消費に回らずに貯蓄されたことが示唆される。この節約された購買力を消費に結び付けることが、中古品市場が拡大する中での経済成長に向けた課題といえる。賃金減少を受けた消費不振と異なり、家計に節約で生まれた購買余力があるため、ビジネスチャンスは大きい。
 正攻法はブランド価値の向上である。ブランド価値が高い商品は、中古品市場での高額売却が期待できるため、高価格でも多くの消費者に購入される。また、自ら中古品売買を手掛け、新品販売との好循環を作り出すビジネスモデルも有効だ。中古では取り扱えないサービスやイベント消費へ注力することも一案である。中古品取引で高まった消費者の購買力を刺激する新たな商品・サービスを企業側が生み出していけば、中古品市場の拡大が消費者の効用を高めるだけでなく、マクロの消費市場にも好影響を及ぼすことが期待できよう。

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