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住宅ローンを抱える若年世帯が増加(総務省「家計調査」)

日本総合研究所 調査部 マクロ経済研究センター 副主任研究員 村瀬 拓人 日本総合研究所 調査部 マクロ経済研究センター 副主任研究員 村瀬 拓人

〔図表〕住宅ローンを支払っている世帯割合の推移(30~39歳、2人以上の勤労者世帯) 〔図表〕住宅ローンを支払っている世帯割合の推移(30~39歳、2人以上の勤労者世帯)

 住宅の購入は金額が大きいため、家計にとって一大イベントである。少子高齢化や単身世帯の増加、持ち家志向の低下などを背景に、住宅を購入する世帯は、趨勢的な減少が続いている。もっとも近年、こうした傾向に変化の兆しが出てきた。住宅購入の中心層である若年世帯では、共働き世帯を中心に住宅の購入に前向きな家計が増えている。実際、総務省の「家計調査」で2人以上の勤労者世帯について見ると、30代の持ち家率が顕著に上昇している。
 こうした動きは、制度変更が住宅購入を促している面がありそうだ。2015年の贈与税の改正で、住宅取得などを目的とした資金贈与の非課税枠が拡大されたことで、30代の人たちは、直系尊属にあたる親からの贈与資金を受けやすくなった。一方、相続税は、基礎控除額の引下げなど増税となったことで、親のほうにも住宅購入資金を生前贈与するインセンティブが高まった。
 しかし、制度変更の影響以上に、日銀の大規模な金融緩和による住宅ローン金利の低下を追い風に、住宅の購入に踏みきる世帯が増えたことが大きいだろう。実際に住宅ローンを抱える若年世帯の割合が急上昇している。30代の2人以上の勤労者世帯のうち、住宅ローンを支払っている世帯の割合(18年)は49.1%と、10年前と比べて11.2%ポイント上昇した(図表)。住宅ローンを抱える若年世帯の増加は、住宅投資を増加させる一方で、個人消費に対しては下押しに作用する。実際に30代を見ると、住宅ローンを返済している世帯は、そうでない世帯に比べ、収入のうち消費に回した割合(消費性向)が7%ポイント低い。ローンを返済するために支出を抑制している姿が鮮明である。
 さらに、マンション価格の高騰により、「背伸びした住宅購入」が目立っていることも問題だ。住宅ローン金利の低下で、多額の借入れを行っても月々の返済負担を抑制することが可能になった。そのため、若年層の間では、利便性の高い都心部の高額物件を購入するケースが増えている。この結果、贈与資金での頭金は支えとなってはいるものの、世帯当りの住宅ローン残高は過去10年で4割増加している。こうした世帯は、変動金利を選択しているケースも多い。金利上昇時に想定以上の返済負担に直面し、消費支出のさらなる抑制を迫られる可能性がある。
 背伸びした住宅購入は、現在の超低金利政策を前提とした行動である。その政策目的が達成されたとき、日銀の出口政策への転換が、思わぬ景気抑制に働きかねない。出口戦略の議論では、こうした家計の債務負担の側面にも配慮する必要があるといえよう。

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