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日本の投資信託は50年の超長期運用に耐えられるのか? 70歳まで働く社会と投信

提供:モーニングスター社 提供:モーニングスター社

 「年金2000万円問題」は、公的年金だけでは老後生活が厳しいことを改めて意識させられた。ただ、年金問題では自助努力と同時に「就労の延長」も進められている。政府は「70歳までの就労機会の確保」を重要な政策課題とし、「65歳までの希望者全員の継続雇用義務化」(2012年改正の高年齢者雇用安定法)に続く法令の準備を進めている。就労が伸びると、一段と長期運用が可能になる。成人から運用をスタートすると50年間の運用期間となるが、日本の投資信託は、50年間というような超長期の運用に耐え得るものなのだろうか?
 

 2019年11月14日現在で、残高30億円以上のファンドで50年以上の運用実績のあるファンドは、全公募投信の中で、野村アセットマネジメントの「積立て株式ファンド(愛称:MIP)」1本のみだ。
 

 同ファンドは、1968年12月25日の設定で、昨年12月に設定50周年を迎えている。設定当初の姿は愛称にある「MIP(Monthly Investment Plan)」=「月掛け投資計画」にあるように、月掛けで「株式」を積み立てていく投資計画のために利用されたファンドだったのだろう。50年前に「月掛け」の考え方を取り入れる先進性が感じられる。1980年8月に運用方針を日経225に連動することに変更。1989年4月には受益権を1対3に分割し1口当たり0.33円にしている。
 

 同ファンドが設定された1968年は、ベトナム戦争が続き、4月に米国で黒人公民権運動家のマーティン・ルーサー・キング氏が暗殺され、6月には選挙運動中のロバート・ケネディ上院議員(ジョン・F・ケネディ大統領の実弟)が暗殺されるなど、動乱の時代だった。日本は高度経済成長に沸き、GNP(国民総生産)が世界第2位になったところだった。
 

 50年という歳月は、凄まじい変化を伴う。1968年の日本は、3億円事件が発生し、若い男子は長髪にパンタロン、女性はミニスカートが流行していた。その後、70年の大阪万博を経て、80年代のバブル景気を経験し、「失われた20年」という停滞期を経て、マイナス金利の現在につながっていく。日本が世界第2位の経済大国になったと喜んでいる50年前の日本人に、50年後は経済規模で中国に抜かれているといっても信じてはもらえないだろう。「隔世」の違いがあるものだ。それほどの変化に耐えうる商品性が求められている。
 

 残高30億円以上という条件で運用実績が40年以上あるファンドは2本、30年以上が19本、そして、20年以上は133本になっている。現在のところ、30年を超える超長期運用に耐えているファンドは希少な存在だ。投資信託協会の設立が1957年7月。協会設立当時は、投資信託委託業務は証券会社が兼業していた。投信会社として独立した存在となった第1号である野村アセットマネジメントの設立が1959年12月になっている。国内に投資信託が誕生してから60年程度の歴史しかない。
 

 また、現在の投資信託の平均保有期間が3年間に満たない。これは、販売会社が手数料稼ぎの手段として「投信の回転売買」のようなことを行っていた時代があったことも関係するのだろう。日本のシニアの資産家の中には、未だに投資信託を運用商品として評価しない人が少なくない。このような過去の悪い評価を覆していくことが求められている。
 

 令和の時代となり、投信を使った資産形成は、老後の生活を安心して迎えるための手段に位置付けられる。政府が用意したiDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAという制度は、運用手段として投資信託を使っている。つみたてNISAは非課税期間が20年間、iDeCoは加入者が60歳になるまで運用を続ける長期運用を前提とした制度だ。これら制度を語る時には、合言葉のように、「長期・積立・分散投資」が言われるが、これまでの日本で30年投資や50年投資を実践した具体例が紹介されたことがない。アメリカにおいては、80年代に始まった401(k)(確定拠出年金)によって、一般の会社員が普通に会社勤めを続けながら何十万人もミリオネア(100万ドルの資産家)になっている。アメリカでは隣にミリオネアがいるからこそ、誰もが資産形成に本気で取り組んでいるのだろう。
 

 日本でも、ようやく長期投資がスタートできる環境が整ってきた。非課税の長期資産形成の手段が用意された。また、70歳まで働く環境ができるのであれば、50歳の人でも20年間の資産形成が可能だ。子育てを終えた後でも、十分に自分のための資産形成を行う時間的な余裕ができる。若いころからコツコツ始めるのであれば、50年間の投資計画も可能で毎月1万円でも比較的まとまった資金が用意できることはいうまでもない。投信運用会社も、長期投資の手段として使ってもらえることを前提に、信託報酬率を大幅に引き下げた商品を出している。令和の時代が資産形成の時代を拓くきっかけになることを期待したい。(写真は、運用期間30年以上・残高30億円でモーニングスターレーティングが高い上位10銘柄)
 

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