雑誌・コラムニュース

死ぬときの「最期の手続き」で、役所・銀行・税務署と上手にやる方法

写真:現代ビジネス 写真:現代ビジネス

「死後の手続き」は大変なんです
(文 週刊現代) 「母が亡くなって、通夜・葬儀と忙しいなか、地元の役所に死亡届を提出しにいった際、『遺族の方へ』という紙をもらいました。死後手続きが山のように書いてあるリストです。役所の職員から説明を受けて、メモを取って帰りました。しかし冷静にやっていたつもりでも、母が亡くなったショックで動揺していたのでしょう。あとでメモを見ても、何を説明されたのかまったく覚えていない。こんなことは初めてで、驚きました」

 こう語るのは人事コンサルタントとして活躍する城繁幸氏だ。東大法学部を卒業後、富士通の人事部に勤務し、独立後は多くの著作を世に出してきたエリートでさえ、死後の手続きには頭を抱えた。

 老親の死に直面し、悲しみに暮れるなか、決められた期限内に煩雑な手続きをせねばならない。

 備えあれば憂いなし、いざという時に混乱しないよう、多くの人がつまずきがちなポイントを紹介していこう。

 死亡届にはじまる役所手続きのうち、まず手こずるのが、実家の住所地の役所に行かねばならず、場合によっては複数回にわたってしまうことだ。

 「死亡届を出した日にもらったリストに従って、健康保険や年金を止める手続きをして、未支給年金の手続きまで済ませました。しかし後日、銀行預金や証券、生命保険の相続手続きに必要な戸籍謄本を取得するため、もう一度この役所に行くハメになりました」(城氏)

 ありとあらゆる手続きの基本になるのが、故人の戸籍謄本の取得だ。

 役所にとっては当たり前のことすぎて、丁寧に教えてくれないので、ここで、二度手間になることも多い。これは相続人の確定にも必要だし、銀行口座の名義変更手続きでは故人の出生から死亡時までのすべての戸籍謄本が求められる。土地の相続手続きではこれに加えて故人の本籍地が記載されている除住民票も必要になる。

「役所仕事」に対抗するテク
 8年前に父を亡くし、著書『父の戒名をつけてみました』もあるライターの朝山実氏も言う。

 「父の本籍地の役所へ新幹線で何度も通うのが大変でした。自分の場合はフリーランスですから平日に動けましたが、そうでなければ難しいでしょう」

 しかし、これには解決策がある。

 「戸籍謄本や除籍謄本、住民票は郵送で請求できます。その後の手続きでは原本を返却しないところもあるので、複数部請求しておくのがいい」(司法書士・鈴木敏弘氏)

 実は、法務局や裁判所関連を除けば、多くの死後手続きは郵送や電話でも可能だ。当該の市役所のホームページを見たり、電話をかけたりして、方法を問い合わせたい。

 そして、二度手間を防ぐために、先に手を打っておくべきものがある。相続人の印鑑証明書と戸籍謄本だ。

 「相続人の印鑑証明書と戸籍謄本は、その後の手続きでも必ず必要になってきます。故人の戸籍謄本とあわせて、死後すぐに取り寄せるべきです。逆に、故人の印鑑などは重要に見えますが、一切必要がない」(夢相続・曽根恵子氏)

 二度手間といえば、役所仕事で困るのが、年金関連の手続きだ。

 「年金事務所は、何かあると『来てください』と言ってくるのが通例です。窓口に行く必要がある場合には、事前に電話をして必要書類を確かめ、準備してから行くのが合理的です」(ファイナンシャル・プランナーの横川由理氏)

 お役所仕事に対抗するには、相手にうっとうしがられるくらい電話で確認してから、一度で済ませるのが正しい方法だ。

Photo by iStock Photo by iStock

【銀行編】預金凍結までのタイムラグを利用する
 役所での手続きを終えたら、次に向き合わなければならないのが遺産相続。なかでも、誰もが直面する難題が銀行口座の名義変更手続きだ。

 前出の朝山氏は、その時の衝撃をこう語る。

 「突然、父の銀行口座が凍結されてしまったのです。父が持っていた不動産の公共料金や、セコムなどの引き落としができなくなった。遺産分割協議が終わらないと凍結を解除することができないので、それらの費用はいったん私が自腹で立て替えました。後に姉兄と四等分にしてもらいましたが、月々3万円近い出費には参りました」

 故人の預金口座は、死亡の事実が判明した途端に凍結されてしまう。

 みずほ銀行が遺族に配付している「相続手続のご案内」によれば、凍結口座からは引き出しや口座振り替えができないだけでなく、「振込でのご入金については、原則、入金のお取扱いができなくなります」とある。アパートを経営しているなど、定期的な振込入金がある人は要注意だ。

 かくも杓子定規な銀行を相手に、名義変更手続きをどう上手く進めればよいのか。

 まず口座残高を調べて、遺産の総額を確定しなくてはならない。残高照会の申請は、他の相続人の同意も必要ないため、比較的ラクに進められる。

 「必要だったのは父の除籍謄本と自分の戸籍謄本、実印と印鑑証明書でした。手続きから10日くらいで各銀行から郵送で残高証明書が送られてきました」(朝山氏)

 ここから財産を確定し、遺産分割協議をする。

 「3人の姉兄と協議をしました。遺言書がないため、こじれはしましたが、相続税申告の10ヵ月の期限を超えるのはまずいと、その直前に協議がまとまりました」(同)

 しかし、ここからが大変だ。

名義変更をラクにする方法
 預金口座の名義変更手続きには、通常以下の書類が要求される。

----------
(1)故人の出生から死亡時までの連続した戸籍謄本
(2)相続人全員の戸籍謄本
(3)相続人全員の印鑑証明書
----------

 なかでも大変なのが(1)だ。故人が引っ越したりして本籍地が移動していれば、それをさかのぼって各役所に申請して取り寄せなければならないからだ。必要書類を提出し、やっと預金を引き出せる。

 だが、この段階までに、おカネが必要になった場合、故人の口座から引き出す方法はないのか。

 誤解が多いのだが、銀行が預金を凍結する時期にはカラクリがある。

 「銀行が死亡の事実を知るのは、実は遺族が直接その事実を伝えた時です。遺族が相続手続きに必要な書類をもらおうとして、死亡の事実を伝えたり、窓口で代わりにおカネを下ろそうとして亡くなったという事情を伝えたりすることで口座が凍結されるのです」(行政書士・山田和美氏)

 逆にいえば、死亡したことを銀行に伝えなければ、窓口を経由しないキャッシュカードなどで口座のおカネを引き出すことが可能なのだ。相続人全員の許可がとれていれば、故人の口座からおカネを引き出しても罪には問われないので、問題ない。

 しかし、相続人全員の許可を取らずに勝手に引き出せば、横領の疑いをかけられ、民事訴訟に発展するリスクもあるので、要注意。なお、40年ぶりの民法改正により、今年7月からは、上限150万円を限度に、故人の預貯金から相続人への仮払いができるようになる見込みだ。

 名義変更手続きには、銀行だけでなく、土地や証券、自動車など様々ある。熊本県在住のセラピスト・中村裕一氏が、亡父の証券口座の名義変更をした際の経験を語る。

 「証券会社の指示通り、父の戸籍謄本と相続人である兄弟3人分の戸籍謄本、3人の印鑑を押した協議書、印鑑証明書を添付して送りました。さらに証券口座の名義変更のために、新たに私の名義の証券口座を作り、そこに父の証券を移してもらいました」

 こうした煩雑な名義変更をラクにする方法はないのか。司法書士の碓井孝介氏が解説する。

 「法定相続情報証明制度を利用することで、各種相続手続きで戸籍謄本一式の提出が省略できます。相続人が必要書類を法務局に提出すれば、法定相続人の情報をまとめた『法定相続情報一覧図』の写しを、無料で何枚でも交付してもらえる。この一覧図の写しが、戸籍謄本一式の代わりになる」

 細かい名義変更手続きはできるだけ工夫して乗り切ろう。

Photo by iStock Photo by iStock

【税務署編】税務署員はここを突いてくる
 役所での手続き、金融機関での手続きが終わったら、最後に待ち受けているのが相続税の申告だ。

 しかし、この相続税の申告については自分とは関係がないと思っている人も多いだろう。相続財産の基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人の数」であり、総額がこれを超えない限りは、相続税は一切かからず、申告の必要もないからだ。

 しかし、実際は申告しなければならなかったのに、間違った計算をして、申告しそびれている人がたくさんいる。それが次のような発想だ。

 「相続税が0円だから申告しなくてもいい」

 だがこれは大きな間違い。3年前に夫を亡くした都内在住の飯島千賀子さん(67歳・仮名)はこの罠にかかった一人だ。

 「私が受け取った遺産は、一緒に住んでいた夫名義の家も合わせて、8000万円でした。『配偶者の税額軽減』という制度で配偶者は1億6000万円まで相続税が非課税になると息子に聞いていたので、相続税の申告はせずにそのままにしていました。すると1年後、税務署から『相続税が納められていない』と突然連絡が来たのです」

 なぜこのような事態になってしまったのか。税理士の岡野雄志氏が解説する。

 「基礎控除額を超えていても、『配偶者の税額軽減』(配偶者は法定相続分相当額または1億6000万円のいずれか多い金額まで相続税が非課税とされる制度)や『小規模宅地等の特例』(故人の住んでいた土地を相続する場合、330㎡までは8割引きで相続できる制度)を使うことで相続税が0円になるケースがあります。しかし、これらの特例を使うためには相続税の申告が必要です」

 このように結果的に相続税が0円になるにせよ申告が必要なケースがある。自分で勝手に計算して、後で痛い目に遭わないように注意しよう。

Photo by iStock Photo by iStock

貸金庫とタンス預金
 さて、税務署は相続税の申告をかなり細かく見ている。「まだ税金が取れるのではないか、隠された財産があるのではないか」という前提で重箱の隅をつつくように税逃れを探しているのだ。

 特に目をつけられやすいのが貸金庫とタンス預金だ。

 「税務署は預金の取引明細は全てチェックしてから調査に来ます。貸金庫については、使用料が預金通帳から引き落とされていると、証拠となってバレます。タンス預金は、口座からの引き落とし額が大きい、もしくは複数回にわたっている場合に怪しまれることが多いです」(岡野氏)

 また、故人が実質的な管理者だった家族名義の預金がある場合には税務調査の対象になりやすい。

 「嫁いだ娘の旧姓のまま親が管理している預貯金や、遠方に居住しているのに親の取引銀行等に預けられている預貯金、届出印が親と同一の預貯金などは名義預金であると疑われやすいです」(NHB税理士法人共同代表・守田啓一氏)

 申告期限後に財産が見つかると最大年14.6%の延滞税と、悪質と判断された場合にはさらに5%から20%の加算税がかかってしまう。そのため、たとえ遺産分割でもめていたり、財産が確定していなかったとしても、申告は死後10ヵ月の期限内に済ませたい。

 「相続税の申告は遺産分割協議が決着していなくても、法定相続分により計算された金額で未分割のまま申告できます。また、相続財産の全体像が確定していなくても、わかっている分で申告し、後で修正申告することができます」(守田氏)

 それでも申告漏れがあれば、税務調査が入ってしまうことがある。

とりあえず申告するという手
 では税務調査にはどう対処すればよいのか。

 プロの目を欺くのは難しいし、嘘がばれてしまえば重い税金を課されてしまう可能性がある。一番潔いのは、税務署から税務調査の連絡が来た時点で、自ら修正申告をしてしまうことだ。

 そうすれば、ペナルティーを最小限に抑えることができる。

 「過少申告加算税は、申告漏れに気づいて修正申告したタイミングが早ければ早いほど軽くて済みます。もし税務調査の通知前に修正すれば、延滞税はかかりますが、加算税はなしで済みます。調査の通知があってから調査で修正事項を指摘される前に自分で間違いに気づいて修正した場合は、本税の5~10%。それ以降は10~15%がかかってきます」(前出・岡野氏)

 税務署の厳しい追及には先手を打って対処していこう。

関連ニュース

銘柄情報を探す

あなたへのおすすめ

情報提供元一覧