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【株式市場】当面は米中貿易協議しだい、日経平均の下値メドは2万円

大和証券 チーフ・グローバル・ストラテジスト 壁谷 洋和 大和証券 チーフ・グローバル・ストラテジスト 壁谷 洋和

〔図表〕日経平均株価における株価純資産倍率(PBR)の推移 〔図表〕日経平均株価における株価純資産倍率(PBR)の推移

 7月まで良好な相場環境が続いていた株式市場は、8月に入ると状況が一変した。トランプ米大統領が、寝耳に水の第4弾の対中制裁関税引上げを表明し、金融市場は完全に不意打ちを食らうかたちとなった。動揺は瞬く間に世界の株式市場に広がり、株価は大幅な調整を余儀なくされた。足もとの相場は徐々に落ち着きを取り戻しつつあるものの、そのダメージはいまだ癒えていないように思われる。当面の株式市場は、ふたたび米中貿易協議の行方に一喜一憂することが予想される。
 しかし、米中問題は必ずしも、このままずっと平行線をたどり続けるとは限らないだろう。内憂外患の中国と来年に大統領選を控える米国は、本当の意味での全面対決を回避したいのが本音と推察する。対立するすべての争点について、双方の合意を得るのは難しいかもしれないが、特定の分野に限れば、部分的な合意に至ることは決して不可能ではないと考える。さらに、その時期として、中国が建国70周年を迎える10月から、APEC首脳会議が開かれる11月中旬ごろにかけて、事態が大きく進展する可能性があるものと有力視している。
 「貿易戦争に勝者なし」と言われるように、米中問題が解決に至らないうちは、両国の景気減速懸念が完全には払拭されない可能性もある。その際に、米国にとってのセーフティネットとなりうるのが、金融政策の追加的な緩和余地である。米連邦準備制度理事会(FRB)は7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、およそ10年半ぶりの利下げを決定したが、パウエルFRB議長は、「長期の利下げ局面入り」を否定する見解を示した。それにより、市場参加者の前のめりの利下げ期待はやや後退したが、米中摩擦の激化に伴い、追加利下げの可能性は足もとで急速に高まってきている。貿易協議の風向きが悪くなってきた局面では、機動的な利下げが投資家心理の悪化を一定レベルで食い止めることが期待される。
 米国の金利低下は円高進行を通じて日本株には不利に働く面もあるが、グローバルの株式市場をリードする米国株の安定化から受けるメリットのほうが大きいと判断される。一方で経済的な結び付きが強い中国の景気不振は頭の痛い問題だが、それでもリスクオフの背後にある貿易問題がこれ以上悪化しないということであれば、日経平均株価が2万円の大台を割り込む公算は低いとみる。株価純資産倍率(PBR)が1倍、つまり、株価と1株当り純資産が等しくなるときの日経平均株価の水準がおおむね2万円と計算され、最近ではそれが下値のサポートとなっているためだ。短期的にここまで調整が進んだ日本株は、やはり割安との判断が妥当だろう。(「週刊金融財政事情」2019年8月26日号より転載)

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