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黒田日銀総裁の出口戦略=入口の90円へ回帰?

「2019年度頃には物価目標2%に達成する可能性が高く、出口を検討していることは間違いない」(2018年3月2日:黒田日銀総裁)



1. 第1期黒田日銀総裁(2013-18年)
 
 2013年4月、黒田日銀総裁は就任後初の日銀金融政策決定会合で、異次元の量的・質的金融緩和策という「黒田バズーカ砲」を打ち出し、2%の物価目標を2年程度で達成する、と宣言した。ドル円相場は、92円台から96円台まで上昇し、日経平均株価は272円の上昇、10年債利回りは0.43%を割り込み、史上最低水準を更新した。
 黒田日銀総裁は、1979年のボルカー第12代FRB議長によるボルカー・ショックという顰(ひそみ)に倣い、マーケットに奇襲攻撃を仕掛けた。1979年、ボルカー第12代FRB議長は、米国経済をインフレから脱却させるために、金融政策の目標を「金利」から「マネタリーベース」に変更するというサプライズを打ち出し、インフレを根絶した。黒田日銀総裁は、日本経済をデフレから脱却させるために、金融政策の目標を「金利」から「マネタリーベース」に変更するというサプライズを打ち出した。しかしながら、5年が経過した2018年2月の時点では、日本のインフレ率はインフレ目標2.0%の半分にも満たない+0.9%で低迷している。インフレ目標に未達の原因として、黒田日銀総裁は原油価格の低迷を挙げ、就任当時、2年でインフレ目標に達成しなければ辞任すると豪語していた岩田日銀副総裁は、消費増税を挙げている。
 このような市場に対する「サプライズ重視」のショック療法は、「合理的期待仮説」の誤解、錯覚に賭けたものであり、ボルカー第12代FRB議長は賭けに勝ち、黒田日銀総裁は賭けに負けたことになる。

 2008年9月の米国住宅バブルの崩壊を契機としたリーマンショックにより、主要国は財政政策が限界だったことで、中央銀行による伝統的金融政策によるゼロ金利近辺への利下げ、そして非伝統的金融政策による量的金融緩和を打ち出した。2017年4月の時点のバランスシートは、連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、日本銀行ともに、4.5兆ドル規模まで増大していた。2012年12月、フィッシャー米ダラス連邦準備銀行総裁は、量的緩和政策第3弾に対して、「我々は、私が『ホテル・カリフォルニア』的金融政策と呼ぶリスクに瀕している。理論的には我々はこのプログラムから好きな時にチェックアウトできることになっているが、我々はFRBのバランスシートを膨張させ続けており、実際はこの状況から抜け出すことはできないかもしれない」と懸念を表明していた。しかしながら、G7諸国の内、連邦準備制度理事会(FRB)、カナダ中央銀行、イングランド銀行は利上げに踏み切り、欧州中央銀行(ECB)も2018年9月に資産購入を停止見込み、ホテル・カリフォルニアからチェックアウトして、出口戦略に踏み出しつつある。黒田日銀総裁だけはホテル・カリフォルニアへの滞在期間を先延ばしして、出口戦略に踏み出していないことで、為替市場では、ドル、ユーロ、ポンドなどの外貨買い、円売り要因となるはずだが、2018年3月2日の時点の外国為替市場では、円は全面高の展開となっている。


2. 第2期黒田日銀総裁(2018-23年)

 黒田日銀総裁が出口戦略の時期を2019年度頃と表明したことで、リスクシナリオとして、入口時点の90円前半の相場水準に回帰するという可能性を検証してみたい。
 ドル円相場のエリオット波動分析では、現状は調整第2波動のC波動で、61.8%押しの94.63円を目指すドル安・円高が想定される。
 また、1974年以来11回の米議会中間選挙の年のドル円相場は、9回が円高基調となるアノマリーが確認されている。「アメリカファースト」(米国第一主義)を標榜しているトランプ米政権は、2017年には米企業の法人税減税を打ち出し、2018年は、議会中間選挙に向けて、米企業の対外競争力を強化するため、保護貿易主義、すなわち、関税引き上げ、ドル相場の引き下げを打ち出す可能性が高まっている。2018年に想定しうるドル安・円高要因としては、米国の双子の赤時(貿易・財政)、中東と朝鮮半島を巡る地政学リスク、日本銀行の出口戦略などが挙げられる。
 黒田日銀総裁の2期目は、出口戦略を模索するなかで、2013年4月の入口時点のドル円相場である90円付近に向けたドル安・円高相場の示現がリスクシナリオとなる。

(山下)

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